第8話 エグランス攻略2

 全員が広間に入り、僕は儀式の準備を始める。

荷物を受け取り、聖杯に聖水、薔薇の香油、僕の血を垂らし、そこに聖石粉を混ぜ、2mほどの魔法陣を描く。

 陣の構成は風と聖属性の付与を目的とする。

 作業を始め、全員が蠢くレイスの塊に警戒し始めた頃、不意に後ろ扉がドォンと大きな音を立て、凄まじい勢いでしまった。


「おい、ウィル!後ろの扉が閉まったぞ!!」

びっくりしたグランが叫ぶ。

「想定済みです!黙って時間を稼ぐ算段をしてください!」

 忙しいから話しかけないで欲しいな~

 付き合いが長いから邪険に扱ってしまったが、後で謝る必要はありそうだ。

 作業開始、念の為、持ち込んでいた杖2本と双剣、大剣(グレートソード)を陣の中に丁寧に並べる。


「さて、ここからが重要だけど……あと5分くらい持つかな?」


 その頃、レイス塊対応班は……


「おう、マジか?何じゃありゃ。唯一、時間稼ぎ出来るウィルがおらんのに…」


 流石のグランも肝を冷やすレベル、人の頭が現れては消えを繰り返す5mほどの球体が何か蠢きながら近寄ってくる。

 その頃、前衛のグランや監視役の後ろで呟きながら話す2人がいた。


「如何します?……」

「如何しますも何も……私達が出し惜しみをした結果、ウィルが消費する結果に……」


 ふたりして後悔をしてるようである。本当はレイス塊に対応できる実力は持っているのだが、作業で疲れるのが嫌で簡単に断ってしまったのだ。監視役に後から咎められるのもあっただろう。

 しかし、状況は度を超えていた。

 ふたりはあれほど危険な物を見たことがない、もっと云うなら古文書にも記述がないレベルの大きさ、込められている怨念もしかりだ。

 ふたりは意を決する、アレの動きを止める魔法を放つ事を…


「ふたりがかりの魔法をいきましょう!出し惜しみしてる場合じゃないですわ!」


 エリンはそう呟いた。

 黙って、リリアも頷いた。


「久々ですわね?この魔法も……」


 幼き頃、まだ貴族の階級など意味を成さなかった、5人の幼馴染みで冒険した時のことを浮かべながら、今まで、啀み合ってのが嘘のように、ふたりでの平行詠唱が始まった……


 ふたりが扱える得意属性の魔法、2属性ずつ同時に放つ、極大魔法を!



「大いなる海よ!母なる大地よ!!汝らが子、我らの大願を……」

「猛る炎よ!すべてを凪がす風よ!!汝らが持てる力のすべてを……」


 幼き頃、まだ冒険とは言い難い5人の憧憬が頭に浮かぶ。

 当時は、仲良く詠唱して魔術を暴走させてダンジョンや草原にクレーターを作り気絶し、執事に怒られ、親に怒られる……

 そんなことが日常的に行われていた。


 実はウィル関係で無ければ、中は口で言うほど悪くない。

 魔法を切磋琢磨してきた中である。


 そんなふたりが放つ、極大複合魔法『グランド・エクスプロージョン』

 凄まじい魔力が渦巻き始める。

 魔力感知では劣るグランですら


「おい、いったい何が、起きた?」


と分かるほどであった。

 そこでふたりの詠唱が完了する。


『天より奇跡を起こす咆吼となせ!』


 それぞれの属性が一辺をなし、芸術的な十字が形成される。

 


『グランド エクスプロージョン!!』


 尋常じゃない魔力の奔流がレイス塊にぶち当たる。


『ブレイク!』


 魔力の十字が回転し、弾ける!

 その瞬間、凄まじい閃光が発生し、逆風が吹き荒れた…

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