第7話 エグランス攻略


 ダンジョンに出発する前に概要の説明があった。


1.行きはショートカット(転送機)禁止

2.行程は監視員含み6人PTとする。

(但し、監視員は戦闘に参加せず、身を守るのみ)

3. 石の切り出し作業はグラン、ウィルだけで行うこと

4.帰りは魔法士のみショートカット可能。

(但し、転送機を使用しなくてもいい)


と大体、予想された範囲でも厳しい条件がやってきた。

 条件自体は先にある程度は聞いていたが、細かいところで追加があるとの話だった。貴族達からも参加者を出している以上は変な条件を追加されないとも思っていたのだが……

 参加者としてはチェスカー家、エジンバニア家から1名ずつ魔法士が出されたが、二人ともフードを深く被り、大きめのローブを着ているため、性別は不明。

声は高めだが男でも居るレベルの俗に云う、甲高い声だ。

 監視人については国首と大公の派閥から1名づつ。

 騎士団の師団長クラスと聞いているが、こちらもフードをかぶっており、顔を伺う事は出来ない。さすがに面を食らったグランが呟く。


「おいおい、仮にも国から派遣される人間が揃いも揃って、身元保証以外不明とは流石にやりにくいぜ?」


 そう、身元保証は派遣した貴族がすべて保証している。責任者として財務大臣のアランがその代行して確認を行った上で来ている。いくら胡散臭くてもこのまま行わなくてはいけない。

 ウィルも沈黙を保っているが、何か言いたげだ。


「此よりエグランス攻略へ旅立って貰う。掛かった費用は各々、担当された家の者より請求してくれ。では、幸運を祈る」


 重苦しい空気を無視してアランが宣言を行った。

 攻略のスタートだ。

 風格のある立派な門替えを見せるゲートをくぐり、転送機のない一般ルートへ向け各人歩き出した。


 4層までは、力むこと無くグランとウィルだけで、ゴブリンや大蜥蜴、コボルトといった魔物を難なく片付ける。

 大したレアも低い階層ではないもので、地図を元に最短ルートで進んでいく。

 だが5層の終盤、急に魔素が重くなった。

異変に気付いたウィルが呟く。


「グランさん、ちょっと不味いのが来たよ…」

「ああっ?この階層だとコボルトリーダーかゴブリンリーダー、属性持ち蜥蜴くらいの雑魚だろう?慌てることないだろ?」


 そうグランは剣、闘気の扱いや肉体強化など騎士としては超一流だが、魔法的なセンスは面倒の一言でやってこなかった為、魔法的な何かを感じる部分は劣る。

 その分、ウィルは満遍なく学び鍛いあげて来たし、魔法に関しては存在能力は高めと診断を受けている。

 ウィルはその感覚で異質な物を捉えた。


「う~ん、不味いな。今回、僧侶いないよね?トレーサーも支給前だし、グランさん、トレーサー持ってきた?」


 首を傾げながらグランが答える


「あのオモチャ、荷物にならないから一応収納に入っているが…、その方向の練りは出来ないぜ?」


両手を挙げ、首を振る。

 魔法士達も…


「私達も儀式をしないと聖属性付与出来ません。魔力で消し去るにしてもしばらく役立たずになるので避けたいです…」


 こちらも芳しくない感じを漂わせている。

 何が起きているか、ウィルが語り出す。


「レイスの塊が来てるんだよ。トレーサーは個人調整されるから借りられないし」


流石にびっくりしたグランが叫ぶ。


「なんだとっ!こんな階層というか、このダンジョンでアンデット系はほぼ居ないはずだ!」


 監視人達も流石に慌てだした。


「流石に聞いてないぞ……」

「我もだ……」


 皆が慌て思慮を重ねていた。

 ずっと考えて居たウィルが何かを思い付いたようだ。


「僕が何とかするよ。魔法士さん、儀式用の聖水を分けてください。後、予備の武器を出す時間を稼いで下さい、グランさん」

「他の皆さんは、他の魔物を警戒してください。大丈夫、なんとかなる!」


ウィンクひとつで微笑んだのだった。





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