第6話 エグランスダンジョン

この国最大級の大きさを誇るダンジョン、エグランス。

 中に巨大な山、アダントを抱え込んでいる造りからして規模は、この世界でもトップ3に入る。

 ダンジョンの構成は50層となっており、最下層にアダント山有する巨大空間となっている。

 闘技士や冒険者達はまずここで訓練してから結界の外で冒険する運びとなる。

 ただ、このダンジョン1層毎に魔素が増す傾向にあり、さらには5層毎にフロアボスと呼ばれる特殊な攻撃をする魔物、10層毎に更に強力な主が現れる。

 真面目に攻略すればボスレアなどで相当美味しいダンジョンだが、古いダンジョンのため、最下層まで攻略済でポーター(転送ゲート)が完備されている。

 最下層の敵はそこそこ強いが、ボスが最初に攻略されてから再配置された事が無く山の鉱物が豊富なこともあり、ある程度実力を持つ方々の鉱物クエストを行うイージーモードダンジョンになってしまっている。

 グランあたりが嫌がるのは、鉱物を取った後の魔物沸きが通常より増えるし、魔物の強さが増すなど、面倒だからである。


 グラン達が出発するのは、3日後となった。

 その間、準備をさせてくれるらしい。特別な許可証が発行され、特別に貴族区にある店舗でも買い物が可能となっている。 

 もっともグラン達からすれば、ただ懐かしいだけの店だが…


「オヤジ!1週間分の食料とダンジョンに籠もる物品一式用意してくれ!!」


 店に到着する同時にオヤジこと、ベグロニに向け、親しげにグランが言い放つ。


「いきなり顔出して、その態度かっ!!」


 さすがに昔馴染みでも少し?問題があったようだ…


「わりぃわりぃ、立場取り戻すまでは顔出すつもり無かったんだが、アランの奴から無理難題吹っ掛けられてな…」


 悪ぶれた様子もなく、ウィンクして片手あげ挨拶する。

 オヤジも慣れた様子で、両肩と手を上げ、無いわのポーズ。

そこまで怒っていないらしい。


「まぁ連絡ぐらい寄越せってことだ!で、他に何か入り用か?」

「ん?あとは、特大容量の小型収納だな?」

「おい?いくらなんでも無理云い過ぎだろぉ?」

「で?あるのか?ないのか??」

「勿論、あるさ。国から出ねぇのか?収納くらい」


 オヤジが首を傾げる。


「話聞いてやがんな?出るだろうが、魔法士を付けると来てる。奴ら、手を抜きそうでな。念には念をだ!」

「自分らの子供寄越す話も聞いてるからそこはしないと思うがね……」

「揃いも揃って問題児だぞ?彼奴らなら何かやってくるさ」


 首を左右に振りなが両手を挙げ、半笑い。


「違ぇねぇな。用心するに越したことはないな」


 オヤジは苦笑を浮かべる。

 グランが去った後……


「ふぅ、あそこまで用心深い男で無かった筈…、何が彼奴を変えたんだ。」

 

 昔馴染みだからこそ感じる何かがあったようだ。


 ところ変わり市民区、ウィルの家。彼の家も大戦の折、エキムが居なくなった事で没収され、市民区グランの家の側に小さい家を宛がわれていた。

 珍しく客が来ているらしく、普段開いている窓も閉められており、なにやら話をしているようだ。

 何故か、風の結界で音が遮断されている。

 客に配慮したウィルの仕業である。


「珍しく君の方から来るなんてどうしたんだい?」

 

 客に向かって質問を投げかけていた。


「近くに用事があったからね。久しぶりだね!ウィル」


 にっこりと微笑みながら挨拶をする。

 勿論、近くに用事があったのは方便だが、表情からはそんな事が微塵も感じられない。

 そして、声を落とし真面目な声色に変わる。


「実は……僕の生業の話でね…。近く行われる発掘作業でお嬢の側にいることになった」


 淡々と語り始める。


「それはどう云う?……あっ、なるほど…昔みたいにか?」


 何かに気付きこちらも声のトーンを落とす。

 昔、4人で遊んでいた時、危なくなると姿を現す5人目の幼馴染み、今来ている客である。ウィルだけは遊んでいる時に彼が近くに居ることは気付いていた。姿を現さないので、出てくるまであえて無視していた。

 危なくなると現れるのでそう云う事だと幼ながらに理解していたのである。


「グランさんには云えないけど、君にだけ伝えておく」


 ウィルは頷き、答える。


「分かった、内密にしておくよ。」


 これはまた何か起きる前兆かな?とカンで空気がざわつくのを感じていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る