第78話 おーるみす
「ともかく……王家の隠れ家に行こうか……」
途中、立ち塞がる住民を蹴散らしながら進む。
マリア姫の暗黒魔術が便利だ。
操られているとは言え、ゾンビ化している訳でもない。
殺すのは気が引ける。
「勇者ぁ!止まって話を聞け。さもなくば自殺するぞ」
「勇者の兄ちゃん!話を聞かないと、起きた後で妹を殺すからな!」
「勇者様!この場で私を犯して下さい!」
ごとり
マリア姫の魔法で集団昏睡。
「……段々、嫌な感じに意地悪くなってきたのじゃ」
「自分の命や自分の身内の命を盾にしてますね……」
困ったものだ。
「直接手を下すのは気が引けるが、後から死ぬのはもう仕方がない。せいぜい、災厄を一刻も早く始末すれば……」
埒があかない。
風の魔法を行使、浮かび上がる。
エメラルドは俺が抱え、マリア姫は蝙蝠に変身。
しばしの空中散歩を楽しんだ後。
森の中の廃墟へと、辿り着いた。
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粗末だが、雰囲気の良い小屋。
だったであろうと思う物。
破壊され、焼け焦げ、無残な事になっている。
「王族って、ある程度強いんじゃないのか?あっさり負けたんだな」
「恐らく、押し寄せた数が数で……それに、さっきの様な意地の悪い脅しをして来たら、逃げるに逃げられなかったんじゃないでしょうか」
エメラルドが溜息をつく。
「良い人達だったんじゃがなあ……」
マリアはそう言うと、廃墟を探索し始めた。
「地下室を見つけましたが……ご丁寧に、火を放たれていますね」
エメラルドが、困った様に言う。
隙が無い。
とにかく……災厄は、街の人そのものを武器として見なしている。
他の災厄の様な、反則級の攻撃は無いようだが。
一方で、攻略の糸口も掴めない。
「おや、会長じゃないか」
「あれ、華田さん?」
「ふむ?確か、ホダカ殿のご学友だったのじゃ?」
現われた華田に、エメラルドとマリア姫が反応し。
当然、俺もそれなりの速度では反応に成功し。
ザンッ
俺の一撃が、華田を……いや、
「何故……分かったんだい?」
華田の姿をしたものが尋ねる。
「ホダカ?!」
「ホダカ殿?!」
エメラルドとマリア姫が、一瞬で警戒態勢を取ると、油断無く華田を見る。
「別に、分かった訳では無いさ。ただ、俺は華田に、何もせず城に籠れと言った。あいつは、分かったと言った。それなのに、のこのこと出歩く様な事をしていたから……斬った。ただそれだけだ」
華田の姿をした者……災厄ドゥーアーが、絶句した様な顔をする。
エメラルドとマリア姫まで、何故か目を見開く。
「大人しく倒されろ、災厄よ」
「申し訳ないけれど、殺されてあげる訳にはいかないよ」
なら……
「受けろ、星が砕ける程の一撃を……グレーターイクスプロージョン!」
ゴウッ
炎の魔法が、ドゥーアーを焼く。
が……そもそもすり抜けている……?
俺がつけた筈の切り傷すら、いつの間にか消え。
「僕は、ただの幻。故に、僕は、危害を加えられることができない」
ドゥーアーが苦笑いをする。
何……だと……
パイロの時の、防がれたとか、耐えられた、とは違う。
そもそも、当たらないのだ。
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