第73話 叡智の具現

「終わりで良いかの?」


剣、魔法、同時攻撃……散々試した結果。

全力で攻撃し続け、ばてている俺達と。

涼しい顔のパイロ。


うん、知ってた。


「そんな……」


エメラルドが、泣きそうな声で呻く。


色々薬も投げたんだが、全部効かなかったしな。

罠も色々設置したが、敢えて踏んでくる始末。


後は……


「一応、まだ試してないものは有るんだが……」


「ホダカ殿、何でも良いのじゃ。全ての可能性を試すのじゃ」


「そうか……なら……」


気が進まない理由。

全知たる存在には、効かないのが分かっているから。


「トラップ、スフィンクスの門!」


ででん。

漆黒のスフィンクスが、1体現われる。

数が減った。


「こいつ、問題が簡単すぎるから、絶対駄目なんだよな……」


「ご主人……それは叡智の具現たる我に対して、余りにも失礼……」


スフィンクスが、半眼で呻く。


「スフィンクスの門……行為の失敗による因果を増幅、罰と縁を結び、破格の力を行使する……悪くない攻撃じゃの」


パイロが褒める。

あんたが全知じゃ無かったらな。


「災厄よ。汝には恨みは無いが……我の汚名挽回の為、礎となって貰うぞ?」


「ふむ。わざと間違えても良いのじゃが……残念ながら、謎掛けは我が魂の遊戯。手を抜くことはできぬ」


スフィンクスの宣言に、パイロが肩をすくめる。


「では問おう……開ける以外に中身を知る手段が無い、3つの箱が有る。2つには価値の無い棒が、1つにだけ伝説の剣が入っておる。ある男が、3つの箱の内1つを手に取った。瞬間、残りの箱の内1つが開き、中身は価値の無い棒であった。残った箱の内、1つを除き、他のハズレの箱が明らかになる仕掛けなのだ。男は、自分が手に取った箱を開けるのをやめ、残った箱を開けることにした。この男の行為は正しいか?」


え。

いや……駄目じゃね?

いや、違う。


そう、2つあって、どっちも50%の確率であたり。

どっちをとっても一緒。

変えても50%、そのままでも50%。

つまり、正しいとも、正しくないとも言えない。

そんな意地悪問題。


「無論正しい」


パイロが自信満々に答え。


ゴウッ


光が降り注ぎ、スフィンクスを次々と貫く?!


「因果の逆流……お粗末じゃな」


「ぐぬぬ……我の最強の問いを……易々と……」


え。

パイロ正解なの?


<称号『正解ですよ。男は正しいです』を獲得しました[1]>


いや、そんな事ないって。

変えても50%、変えなくても50%じゃん。


<称号『箱が100個あったと思えば良いのですよ。最初の選択した箱は、1%の確率で当たり。残りの箱は、99%の確率であたり』を獲得しました[1]>


……あれ……あ……


「え、今のって、直感に従って選んだ最初の箱の方が、まだ確率高いですよね?」

「むむ……?いや、確率は半々として……何故、変えた方が正解なのじゃ?」


エメラルドとマリアが首を傾げ合う。

何かすっきりしないが、変えた方が正しいのは何となく分かった。

スフィンクス、ちゃんと難しい問題知ってるじゃん。

そして、パイロ、最強過ぎる。

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