第70話 人の人生をジャンル付けするな

キイ……


扉を開けると、別の部屋に出た。

3人が部屋に入ると、来た扉が消え。

次の扉と、見慣れた近代的な洗面所、看板、80インチくらいのテレビが出現する。


『手を洗って下さい』


「……何だ?」


ともかく、言われた通り手を洗う。

テレビからは、正しい手の洗い方のムービーが流れる。


「うわ、何か出たのじゃ?!」

「泡……ですか……?」


人感センサーで泡石鹸が出るようになっているのだが。

新鮮な驚きを提供したようだ。


「地球──召喚元の世界では一般的なんだがな。この設備も、テレビも、流れている動画も。エメラルド達には珍しいか」


「……いや、何で、ホダカ殿の召喚元の世界の物が、此処にあるのじゃ?」


え。


そ、そう言えば。

何で、此処にこれがあるんだ?

パイロが用意した空間だよな?


<称号『手洗いは重要なんです。疎かにしてはいけませんよ。そういう時代なんです』を獲得しました[1]>


いや、時代に関係なく重要だとは思うが……


ともかく、かなり丁寧に手を洗った結果、扉が開く。


次の扉は……扉と、看板、そして、台の上に乗った白い粉と、クリーム。


『塩とクリームを身体に塗り込んで下さい』


これ、食べられる奴じゃね?

まあ、先に進む為にはやるしか無いんだろうけど。


とりあえず手と顔に塗ったら、先に進めるようになった。

うへ……べたべたする……


「うう……お風呂に入りたいのじゃ……」


流したら調味料の意味がないじゃないか。


次の扉は……近代的な浴室と、扉と、看板。


『身体を綺麗にして下さい』


さっきまでのくだり、いらなくね?!


「……と、ともかく。先にエメラルドとマリアが……次に俺が入るよ」


撮影とかされてないだろうな……


「ホダカ殿……これはどう使うのじゃ?一緒に入って貰わないと困るのじゃ」


マリアが困惑した様に言う。


「あのなあ……俺は、異性と一緒に風呂に入る気は無い」


「ホダカ……今の危機的状況、そんな事を言っている場合では無いと思うのですが」


エメラルドが、素の表情で突っ込む。

いや、そうなんだけどね……


「分かった、ともかく目隠しして……」


「使い方が分からないのじゃ……困るのじゃ……」


マリアが懇願する様な目で言う。

く……


「わ、分かった」


く……とにかく……視線を逸らして……


「ホダカ殿……何処を見ているのじゃ?!あの長い物が襲ってきたり、爆発したら怖いのじゃ。ちゃんと見ておいて欲しいのじゃ!」


抱きつかれる。

シャワーはそういう物じゃありません。


「ホダカ……これなんですけど……」


エメラルドが、真剣な声音で言う。


「ど、どうした?」


「はい……私の胸、大きさとか、形とか、どうでしょうか」


「感想を求めないで貰えますかね?!」


と、ともかく。

無事入浴を終え、次の部屋に。


そこでは……


扉、看板、ベッド。


看板には、まあ、しないと出られない、そんな内容が。


……何かおかしい。

これは流石に、みんな冷静になる筈だ。


「ホダカ……」


エメラルドが、俺を真っ直ぐに見据え、


「覚悟は出来ています。世界を救う為には、仕方がありません。まずは私と」


「ちょ」


「ホダカ殿、妾も、世界を救う為なら、喜んでこの身を捧げるのじゃ」


「いや……そのだな……」


「ホダカ……今がどれだけ危機的状況か分かっているのですよね?世界の存続が、私達の双肩にかかっているのですよ?」


くそ……さっきから……何なんだ……?


<称号『虎穴に入らずんば虎児を得ず……ともかく、やるしかなさそうですね。大丈夫です、隠しカメラの様な物は無い、それは保障しますよ』を獲得しました[1]>


いや、そういう事では無く。


<称号『言いたい事は分かります』を獲得しました[1]>


ほう。


<称号『意外と難しいんですよね、あれ。よく創作とかで簡単に成功しているけれど、実際にやったら凄く難しいって分かるんですけどね。お互い未経験で、最初から成功するって、どんなファンタジーだよって感じです』を獲得しました[1]>


そういう話はしていない。


<称号『おっと、ジャンルはファンタジーでした。これは一本取られましたね』を獲得しました[1]>


勝手に人の人生をジャンル付けしてんじゃねえ。


<称号『名言頂きました』を獲得しました[1]>


あげてない。

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