第69話 ゲームオーバー

おかしい。


突如召喚円が現われ、強力な魔物が出現。

その異常現象は続いているのだが。


出てくる敵が、最初の兎はおろか、修行結界よりも明らかに数段劣る敵、その頻度も低い。


ザンッ


エメラルドの一閃、数体の魔物が倒れ伏す。


「妙じゃの。手応えが無さ過ぎるのじゃ」


マリアの放った魔法が、数十体の魔物の命を奪う。

一応、目に付いた魔物は処理している。

俺達や、クラスメート達には雑魚でも、一般の人には脅威だからだ。


「王城に向かうペースを早めようか。油断は禁物だけど、意外といけそうな気がしてきた」


ともかく、災厄は王城で何かやりたがる。

今回も、とりあえず首都へ向かおうという結論になった。


俺達の違和感を尻目に、行程は順調に進み。

あっさりと王都へと着いた。


「この周辺には結界石は無いのじゃ。が、この程度の敵であれば、問題ないのじゃ」


マリアの張った結界。

下手な結界石より強力なそれは、見事に敵の侵入を阻んでいる。

といっても、カトブレパス、ケルベロス、エンシェントドラゴン、グリフォンといった、名前負けしている連中ばかりなのだけど。


翌朝。


行動を開始。

危な気も無く、王城へと侵入し。


そして。


ゲームオーバーになった。


--


『お主がこの手紙を見ているという事は、儂は勝利したようじゃ。

此処は、儂が勇者の為に100年かけて造った結界。

ただ単に、中に入った者を外に出さない為の単純な空間。

それと、一定以上の強さの者を認識して発動する転移罠。

単純だが、それ故に有効だったようじゃな。


お疲れ様でした。


パイロ』


羊皮紙に、達筆でそう綴られていた。


……


「え、これ、詰んだんですか……?」


エメラルドが、呆然とそう問うと、ぺたぺたと周囲を触る。


「100年かけただけはあるのじゃ……見事に、隙間がつるつる……空間を破壊する隙間も見た当たらないのじゃ」


マリアが呻く。


マップも、完全に閉じているしな……

強化された罠発見でも感知できないとは……


<称号『転移罠の方は、千年かけて造ったようですし』を獲得しました[1]>


絶対時間の使い方間違っていると思うよ。

その時間に、何回世界を滅ぼせたんだい?

というか、そもそも、封印できていたのか?


「ホダカ。空間破壊……というのは、もう一度できないのでしょうか?」


「無理だ。あれは一回きりらしい」


……もう一回出してくれるか?


<称号『駄目です』を獲得しました[1]>


よ、頼れる相棒!


<称号『キース君の事ですか?』を獲得しました[1]>


もうキース君はいないんだ。


<称号『駄目です。システムサポートの範囲を超えています』を獲得しました[1]>


「ホダカ殿、あの扉は何じゃろう?」


「扉?」


[非常口]と書かれた、白地に緑色の照明看板。

例の人のマークも描かれている。


「……非常口らしいな」


何故そんな物が。


<称号『完全に閉じた空間は、意外と難しいのです。何処か穴を開けておく必要が有る……そういう物なのです』を獲得しました[1]>


その穴が非常口、って訳か。

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