第48話 斬新な解釈

今後、災厄探しは少し楽になりそうだ。

……まあ、そこまで高範囲に表示してくれる訳ではないみたいだけど。

もっとマップスキル上げようかなあ。


……ん。


<称号『どしたん?』を獲得しました[1]>


災厄倒しても、何も達成報酬無いのか?


<称号『別に、何かを達成したからとかで報酬が得られるシステムでも無いですし』を獲得しました[1]>


称号システムって、何かを達成する度に貰える物じゃないの?!


<称号『斬新な解釈ですね』を獲得しました[1]>


いや、ほら。

初めて魔物を倒した、とか。

初めて泳いだ、とか。

そういうので貰える物だろ?


<称号『……称号を何だと思ってるんですか?』を獲得しました[1]>


どういう物なんだ?!


<称号『エメラルド姫と、マリア姫の安堵の顔……それが、何よりの報酬です』を獲得しました[1]>


……まあ、確かに。


<称号『ほら、初エッチとかしたら、スロット追加とかの報酬あげますよ』を獲得しました[1]>


ハードル高すぎませんか?!


ともかくも。


これで、災厄は2つ乗り越え。

残り5つ……


先は長い。

晴れやかな場面の筈なのに。

暗澹たる気分になった。


--


「ホダカ殿。我が国を……いや、世界を救って下さり、本当に有難う御座います、なのじゃ」


「この国は救えなかったが……それでも、災厄は滅びた。マリア姫も、安らかに眠って欲しい」


「その事なのじゃが……此度の件、感謝しても仕切れぬ……それに、妾は最早不死の身……この命を自ら絶つ事もできぬ……御願いじゃ、妾も、そなたらの旅……この世を救う旅に、連れて行っては貰えぬか?」


俺は、微笑を浮かべると、そっとマリア姫にポーションを握らせ、


「吸血鬼コロリ、だ。効果は保証しよう。無論、苦しまずに逝ける事も分かっている」


死ねないのは辛いもんな。


「「え」」


マリア姫とエメラルドが呻き声をあげる。

どうした?


「いや、命を絶つ云々は置いておくのじゃ。勇者様……妾も、この世を救いたい……一緒に妾も、導いて欲しいのじゃ」


あれ。


俺は、首を振ると、


「マリア姫……俺は、エメラルド姫の勇者だ。俺は、貴方の勇者にはなれませんよ。もしも貴方が世界を救う勇者を求めるのなら……貴方は、貴方の勇者を見つけて下さい」


「のじゃ?!」

「ホダカ?!私、独占なんて望んでない?!協力者は多い方が……」


俺は、エメラルド姫の肩を抱き、


「エメラルド……俺は、あなた一筋だ。最初に見た時に心を奪われ……いや、その後、もっと貴方の事を好きになった。自らの罪を認め、それを乗り越え……いや、そもそも、歪められた心でいた時すら、世界を救う為に行動を起こそうとしていた……俺は貴方だけの勇者で……そして、貴方は俺だけの姫でいて欲しい」


「ホダカ……でも……嬉しいです。私も、ホダカの事、お慕い申し上げています……私を……導いて下さい、勇者様」


……これって、両想い?

いや、焦るな、俺。


<称号『じれったいですね』を獲得しました[1]>

<称号『押し倒しましょうよ』を獲得しました[1]>


マリア姫が見てるんですけど?!


<称号『3Pですよ』を獲得しました[1]>


いや……しかし……


<称号『じれじれですね』を獲得しました[1]>


と、ともかく。


マリア姫は溜息をつくと、


「分かったのじゃ……妾は、一足先に、輪廻の輪に戻らせて貰う……エメラルド、世界を……そして、ホダカ殿を……頼んだのじゃ」


「あ……はい……ごめんね、マリア……」


誰にも看取られず、逝くのじゃ。


マリア姫はそう言うと、静かに飛び去った。


有り難う、マリア姫。

貴方のその心の在り方は……美しかったよ。


「ホダカ……あのね……」


「うん……」


エメラルドが、そっと、俺の身体に腕をまわす。

俺も、エメラルドを抱き返し。


泣いている。

それは、別離の涙か。

でも、不思議と温かい。


この国は、これからも、夜空の下、死の気配が満ちるのだろう。

もう、嘆きの姫はいない。

もう、災厄は無い。


だから……きっと、時間をかけて、浄化される。

それは、定められた未来。


無論。


他の災厄に、俺達が負けなければ。


ぱさぱさ


羽音と共に来たのは……


「相棒よ。首尾良く、災厄を消してくれたようだな」


「おお、キース君!何処に行っていたんだ?!」


「え」


キース君戻ってきたあああ。

何故か、エメラルドが呻き声を上げる。


「首尾良く……キース君の目的も、災厄の討伐なのか?」


「そんなところだ。オラリドゥだけでは無いがな」


「なるほど、キース君も、災厄の根絶……世界の救済が目的か。俺達と一緒だな」


「そういう事だ」


「なら、キース君も一緒に行くか?俺達は、目的も同じようだし」


「然り」


あれ、エメラルドが微妙な顔をしている……?


「エメラルド、キース君が一緒に来るの、反対か?」


ぶんぶんっ


見た事が無いくらい、全力でエメラルドが首を振る。


「賛成、賛成、大賛成!キース君?……も、是非とも一緒に来て欲しいな!」


「おお、エメラルドも乗り気か。良かった」


旅は道連れって言うもんな。

人数は多い方が、世界を救える確率も上がるし。

……ハーレム物のラノベじゃあるまいし、何故か美女の仲間ばかりどんどん加える……そんな展開は良くないとは思うけどな。

キース君は男だからセーフ。

……キース君って、本当は王族で、元は人間だったりするんだろうか?

色々事情も詳しいし……案外、マリア姫の兄とか弟とかなのかも知れない。


こうして。


2人と1匹。

世界を救う旅が……再び、始まったのだった。

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