第44話 大人

華田は、運動能力は常人だ。

100m走で9秒ちょっと。

クラスでも、下から数えた方が早い。


勿論、勉強は凄まじくできる。

全国統一模試で、2位の常連だ。


「まあ、これに懲りたら、我々の邪魔をせぬ事じゃ。詳しい事は言えぬが、お主らにとっても大事な事なのじゃ」


「……ああ、会長はまた何かやっているのかい?キミは、気づくといつも世界を救っているよね」


「……お主、あちらの世界でも偉人だったのじゃな」

「流石ホダカです!」


「人を勝手に超人っぽく言わないでくれるかなあ?!」


そんな事実は無い。

華田の欠点その1。

若干、厨ニ病入ってる。


「……分かった。邪魔はしない……でも、僕に……僕達に手伝える事は有るのかな?」


「無い」


クラスメートがそこまで強く無い事が判明した以上、手伝って貰える事はそう多くない。

まあ、王女の事がバレてクラスメート達に殺される心配も杞憂だったようだけど。


<称号『むしろ、そこまで強く無い友人達が、超常の強さの災厄達と接触して、危険に晒される……そんな心配した方が良いくらいですね』を獲得しました[1]>


……確かに。

心配事が増えたな。


「華田……さん?王都の方面から歩いて来た様ですが、何か有りましたか?」


「うん。城を訪れた賢人からの依頼でね、僕も世界を救う、ささやかな手伝いをしたのさ」


ん?


「何をしたんだ?」


「王城、地下に、呪いの祭壇があってね。この国の悲劇は、そこから起きた……悲しみの連鎖を止める為、その部屋を破壊してきたんだ」


「地下に部屋じゃと……?地下には聖棺の間せいひつのましか……まさか……お主よ、その破壊した部屋とは、純白で、壁に黄金の剣が掛かっていて、祭壇に盾が飾ってある……」


「おや、知っているのかい?」


「……破壊した……のじゃ……?」


「造作も無い事だったね」


華田が再び胸を張る。


……まさか……それ……


<称号『残念ながら、災厄への対抗手段は失われたようです』を獲得しました[1]>


ああああああ。


<称号『炎で焼こうぜ』を獲得しました[1]>


焼かねえよ。


--


とにかく、何もしないでくれ。

頼むから、みんな城で大人しくしていてくれ。


そう、泣きながら頭を下げ。


華田も、自分が何かまずい事をした、までは察し、大人しく帰ってくれた。


……どうするかなあ。


「……察したとは思うのじゃが……聖棺の間せいひつのまで特定の儀式を繰り返す事で、災厄への対抗手段が授けられる。それが破壊された以上、新たにそれを入手する事はできぬのじゃ」


「代替手段は無いのかな?」


「無いのじゃ。王家に連なる者は全員持っておったが……魂を穢されては、そのスキルも使えぬ」


スキルかあ。


「そのスキルの名前は?」


ひょっとしたらポイントで取れないだろうか。


「うむ。『聖剣』というスキルと、『聖鎧』というスキルなのじゃ」


聞いた事がありますね。

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