第38話 キース君

「ホダカ。今日は此処を拠点にして、周囲で戦ってみますか?」


「そうだな。夜がどんな状況なのか知っておきたい。今日はもう休もうか」


「はい。あ、お金節約しないとだから……ダブルベッドの部屋で良いですよね」


「いや、シングルルーム2つの方が安いぞ。時価で変わるらしいな」


「……はい」


部屋数が少なくなると高くなる。

今はシングルルームが余っているので、2部屋借りた方が安い逆転現象が起きていた。


まあ、お金には困ってないんだけどな。


--


「……確かに多いな」


以前アンデッドを狩ったダンジョンは、必死に敵を探したが。

此処では、常に視界にアンデッドが入る感じだ。


……皆、少し前までは普通に生きていたんだよな。


「ホダカ、気をつけて下さい。噛まれたら、魔素が入り、アンデッド化してしまうかも知れません。他にも、上位アンデッドは、生者をアンデッド化する魔法があるとか……」


「レジストポーションを飲んでおけ。全てのバッドステータスを無効化する」


「……流石、ホダカです。有難う御座います」


レジストポーション。

効果時間は365日……つまり、1年しかもたない。

永続的に効果を得る為には、1年に1回は飲まなければ。

精一杯改良したが、これが限界か。


<称号『改良というより、魔改造ですよね』を獲得しました[1]>


ヒヒヒ……


少しずつ、にじり寄る、ゾンビ。


「主よ、憐れみ給え……聖撃!」


エメラルドが次々と放つ光。

ゾンビを昇天させていく。


ヒヒヒ……


「主よ、憐れみ給え……聖炎!」


コウッ


遠くにいたアンデッドの群れ。

偉そうに中心にいたデュラハンっぽいやつごと、跡形も無く浄化。

流石に、王都から遠いだけあり、敵は弱いようだ。


ガタ


スケルトンが近くで起き上がり。


ヒュンッ


俺が放った剣撃が、スケルトンを浄化する。

もともとミスリルはアンデッドに有効ではあるが、聖剣スキルの効果があるので、より有効だ。


俺は、エメラルドを見て、


「1週間程、此処に滞在しよう。俺も、戦いに慣れておきたい」


「1週間も……ですか?分かりました」


エメラルドが小首を傾げた。


--


ゴォッ ゴォッ ゴォッ


凄まじい音、凄まじい腐臭、凄まじい悪寒。

百体……いや、二百体にのぼろうかという程の、アンデッドの群れ。

スケルトン、ゾンビ、リッチー……


身体には緑濁、紫濁した体液が流れ。

齧りつく亡者の歯。

スケルトンの剣が、矢が、身体をうつ。

リッチーの暗黒矢が身体を穿ち。


ごくり


飲み込んだポーションが、体力を回復させ……


「……理解できぬ趣味だが……御満悦か?」


「趣味じゃねえよ」


スキル上げだよ。

聖鎧のスキルレベル上げ。


本来ならおそらく、回復の暇すら無く即死。

聖鎧スキルは、強力だ。

最近は大分余裕が出てきて、30分に1回くらい回復でも余裕が有る。


「ふむ……また追加するぞ」


「なら、少し減らすか」


聖剣が宿った剣を一閃。

一角が浄化、昇天する。


ドヴァア


空いた場所に新たなアンデッドが殺到。

マジ気持ち悪い。


まあ、不死耐性だからまだマシだ。

これが蟲耐性とかなら、スキルレベル上げは絶望しかなかった。

蟲、マジで生理的に駄目。


<称号『ほう?』を獲得しました[蟲盾]>


あと、動物耐性とか、悪魔耐性とか、天使耐性とか、マジ無理。


<称号『饅頭怖いには引っかからない。そう告げた筈ですが』を獲得しました[1]>


く……


「あと30分程で夜明けか。契約はあと2日……」


「ああ、分かっている。本当に助かっているよ」


「構わぬ。助けられた恩は返すし、これは我の浄罪でもあるからな」


会話相手は、新しい相棒、キース君。

さて、そろそろ……今日のシメ、一掃と行くか。


ヒュ


剣に再度力を込め。


ヒュヒュヒュ!


集る亡者どもを、次々と昇天させた。

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