第34話 禁忌・存在壊変

「そんな……ヴァヌサ老が、グネディア?!そんな……まさか?!」


エメラルドが、へたり、と座り込む。

俺もへたりたい。


「今度はこちらから問うぞ。何故、儂の正体が分かった?」


「……このブロマイドで判断した」


「これは何かね?!」


写真だよ。

それまで超然としていたグネディアが叫ぶ。


まさか、エメラルドの温泉の代わり……なんて言えず。


「ちょっと、闇ルートでな」


「儂の正体は闇ルートで出回っているのかね?!そもそも、これは何だ?絵?絵の具?この光沢は??」


いや、驚く場所違うくね?

写真なんてありふれて……


そうか。

まさか……この世界には……写真が無い?


なるほど。


「それは写真、だ。異世界では一般的なんだが……こちらの世界には無いから、計算違いだった様だな」


「……正体看破の魔導具か。見事、と褒めておこう」


グネディアが、低い声で言う。


「流石……ホダカです」


エメラルドが、驚きを込めて言う。


くそ……


正体に気付いた驚きで、微妙に戦いは開始していないが……

絶望的な状況には変わりが無い。


話を引き伸ばしつつ、突破口を。


「エメラルド、グネディアがヴァヌサ老と入れ替わっていた……という事か?」


「いや」


答えたのは、グネディア本人。


「賢人ヴァヌサなど、最初からおらぬ。百三十年前……見事復活を果たした儂は、王家に入り込み……」


えらく昔ですね!


「慎重に……選民意識を埋め込み、王家と民心を離れさせていったのだ」


「……まさか……なんて狡猾な……!」


エメラルドが絶句する。

いや、普通に直接王家を滅ぼす機会、何度もあったのでは……?


「機は熟し」


熟々ですね。


「今……我が企みの通り、王家は潰えた……勇者に邪魔された、お前を除いてな」


「く……」


エメラルドが悔しそうに呻く。

まず、130年も前に復活され、しかもずっと気づかなかった時点で、既に負けだと思う。


「では、エメラルド姫よ……死ぬが良い!」


唐突に攻撃に出るグネディア。

卑怯な……!


エメラルド姫を抱え、回避。

エメラルド姫のいた場所が腐食し、崩れる。


「病の魔王じゃなかったのか?随分派手な魔法じゃないか」


「くくく……病の魔王だからといって、まわりくどい攻撃しか無いと思わぬ事だ。むしろ、我は病の魔王らしからぬ……迂遠な事は好かぬのだ」


130年かけてちまちま謀略してた奴が何を言うか。


くそ……

どうすれば……


何か……手は……


<称号『使え、お前が使う事に意味がある』を獲得しました[禁忌・存在壊変]>


?!


<称号『禁忌シリーズのコマンドスキルです。世界を作り変える、禁断の行為……御使用は計画的に』を獲得しました[1]>


ごくり。


だが……使わない……手は無い!


「グネディアあああああああああああ!」


俺は、グネディアに手を伸ばすと、全力で叫ぶ。


『汝……ダークロード……也』


因果が……歪む。

改変される世界が、悲鳴をあげ……


そして……


「ぬう……何をした、勇者?」


グネディアだった存在が、訝し気に言う。


「ダークロード……変わって……無い?」


エメラルドが小首を傾げ……


ん?


おい、これ、どういうスキルだ?


<称号『存在を改変し、真名を変えてしまう……がくがくぶるぶるー』を獲得しました[1]>

<称号『これでヴネディアと間違いません!』を獲得しました[1]>


いや、それどうでも良いから。

名前が変わったのは分かったから、それでどうやって倒すのに繋がるんだ?


<称号『は?』を獲得しました[1]>

<称号『名前を変えたからって、相手を倒せる訳が無いでしょう?』を獲得しました[1]>

<称号『馬ですか?鹿なのですか?』を獲得しました[1]>


倒せないのかよ!

そして、何その煽り方!

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