第33話 修行

「ともかく、グネディアを探しましょう。グネディアにこの封印の神水を浴びせれば……」


「封印できるんだな……」


エメラルドが、ゆるりと頷く。


<称号『ヴネディアではないですよ、グネディアですよ』を獲得しました[1]>


ややこしいからやめろよ。


「でも、どこにいるか……見当がつきません。探査の秘薬が作れないのが痛いですね……」


クラスメート達、迷惑な事をしてくれて……


「ともかく、信頼できる人物に相談しましょう。賢老ヴァヌサ。一般国民は知らない、王家の相談役です」


「ほう、そんな人物が」


「はい。もう数百年生きていると言われています。メケメコの瞳……あの人なら何かご存知かも」


まだ可能性は繋がっている……


「よし……行こうか」


--


クラスメート達に見つからない様に、脅威度を頼りに大回りしながら目的地へ。

存在がクラスメート達にバレていれば、最悪待ち伏せがあり得るが。


行程は順調だった。

あまり強い敵も出ず、あっさりと目的地に。


「グレータードラゴン、ヴァンパイアロード、モノペガサスにエイシェントディアー、フォレストジャイアント……」


「どうした?」


「い、いえ……何でも無いです」


エメラルドがやたらと格好良い名前を並べる。

まさかこの先に出るのか?

当然、俺の戦闘能力で太刀打ちできる存在ではない。

まあ、何でも無いと否定したのだから、この先出る確率は低そうだ。


<称号『ドラゴンスレイヤー』を獲得しました[1]>

<称号『ヴァンパイアハンター』を獲得しました[1]>

<称号『馬鹿』を獲得しました[1]>

<称号『ジャイアントキリング』を獲得しました[1]>


うお、どうした急に。

トカゲとかなら倒したけど。

というか、悪口が混じってるんですけど。


「此処に近づく存在がおるとはな……この老いぼれに何の用じゃな?」


「ヴァヌサ老、私です、エメラルドです!」


「なんと……これは……エメラルド姫……随分大きくなられて……」


「ご無沙汰しております」


ヴァヌサは、俺を見て、


「ふむ……王女様と一緒におるとは……そうなると、お主が勇者殿……そうであるな?」


んん……?


「はい、そうです。それで……早速ですが、相談があって」


「ふむ……メケメコの瞳……かの?」


「はい、流石ヴァヌサ老!」


……あれー?


あいつ……グネディアじゃん。

ブロマイドと改めて見比べる。

間違いない。


気付かれる前に……仕留められるか……?


<称号『ちなみに、グネディアの強さは、花園君を笑ってころころできるくらいです』を獲得しました[1]>


おい、修羅神仏!!

Cで修羅神仏並だったよな!!

どういう事だよ!!

ゲームバランス考えろ!!


<称号『そらよ』を獲得しました[全ステータスアップ]>


ステータスがE→Dになったが、焼け石に水。


ともかく、隙をつかなければ。

俺が気づいているとバレれば、即死する。


……そうだ。


こけたフリをして……

うっかりこぼしちゃいました、で。

空間収納の中で、グラスに移し替えて……


「お初お目にかかります、ヴァヌサ殿。お近付きのしるしに、ドリンクでも──うわあ」


ぱしゃり


グラスから、品質Sの封印の神水、しかも2つ分。

かかった……!


「ホダカ?!ヴァヌサ老、すみません!」


……?

あれ、全然効いた様子が無い?


「ふむ。これは封印の神水。儂の正体に気づいている、という事か。流石勇者殿」


「……何故無事なんだ?」


「なあに。修行による弱点克服……勇者だけの特権だけとは思わぬことよ」


いや、それは特権にしておけよ。

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