第30話 みんな違って、みんな良い

精神を集中……そこからの素振り。

最低でも999……できればそれ以上を目指したい。


「ホダカ、お疲れ様、です」


可愛らしくエプロンをつけたエメラルドが、スープを差し入れてくれる。


<称号『何故この娘は、エプロンをつけてるのに、下に服を着るんですかね』を獲得しました[1]>


エプロンは服の上から着るものだからです。


「有難う、エメラルド」


あれから2週間。

エメラルドは、戦いはあまり得意では無いが、料理は才能がある様だ。

最初は経験が無いと言っていたのに、めきめき上達した。

可愛い子の手料理……幸せ。


はあ……料理スキルを取ろうかなあ。


<称号『なんでやねん』を獲得しました[1]>

<称号『可愛い女の子に作って貰うから良いんでしょうが』を獲得しました[1]>

<称号『得意不得意、それぞれ役割分担……みんな違って、みんな良い。そういうの、大切ですよ』を獲得しました[1]>


……仕方がない。

戦闘スキルを磨くのに精を出すか。


「あの、ホダカ。そろそろ食材が減ってきたので、補充して貰えますか?」


洞窟の一角に氷を造り、そこに食材を適当に積んでいた。

だが……そろそろ空間収納の食材も尽きる。

久々に狩りに行くか。


「分かった、採ってくるよ」


「お願いします」


さて……とりあえずキノコでも。


<緊急クエスト『キノコ狩り』が発生しました。時間内に50本のキノコを収穫して下さい>


うお。

久々の。


まあ、50本なら余裕か。


<500本にします>


増やすなや。


山を駆け、そう苦労せず、キノコを収集。

MAPと感知のお陰で、結構楽だ。


500本、と。


<緊急クエスト『キノコ狩り』をクリアしました>


****************************


黎明の空、惑う雲。

因果の改竄は、致命的で。

人類に抗う術は無し。


鱗粉を散らしヴネディアは嗤う。

闇の中に。


目覚めし聖女、勇者に懇願し。

勇者、命を賭して因果律を解く。


ヴネディアよ、絶望せよ。

卑劣なる企みは、潰えた。

希望は、明星と共に上る。


ヴネディアよ、グネディアとややこいぞ、ヴネディアよ。


ヴネディアは、幾千幾万の謀、次の矢を番え。


勇者よ、安ずるな。

死は、常に傍らに在る。


--


謎フレーバーテキスト。

名前、確かに似てるよね。


<称号『駄作ですね』を獲得しました[1]>

<称号『あなたは元の世界に戻って不老不死になるから、死が傍らに在るは嘘です』を獲得しました[1]>


不老不死って、ちゃんと嘘だよな?!


<クエスト達成報酬、[神儀料理人]を取得しました>


おお、料理の才能じゃん。

料理スキルとセットなのか、単独で良いのか。


ステータスを開き、[神儀料理人]をタップ。


ブンッ


ウインドウが表示され、俺とエメラルドの名前。

誰に使うか、って事か?

勿論、俺。


ぶっぶー


<使用条件を満たしません>


?!


あれ……


料理スキルを取得してないからか……?

仕方がない……取得を……


ぶっぶー


<必要なスキルポイントが不足しています>


何……だと……?

たしか10ptだった筈だが……?


10恒河沙pt


いや、幾らだよ。

数字の単位じゃねえ。

バグってるじゃねえか。


<称号『バグっているのはあなたの頭では?』を獲得しました[1]>


何で毒吐いたの?!


く……仕方がない、エメラルドに使うか……あ、使えた。


せっかく入手したクエスト報酬は、無駄になったのだった。

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