第27話 特別に勘が鋭い様ですね

ギルドマスターのおっちゃんに相談してみよう。

ふと思い立った。

素材買い取りができるかもしれない。


エメラルドは、こわごわついてくる。

大丈夫、黄昏の指輪を信じろ。


「おう、あんちゃん、久し振り……横の奴は……ふん、やはりそうか。久し振りだな」


「ロアン……やはり、私が分かるのですね」


「いや、悔しがられても、顔も隠さず堂々としてれば気づくだろう」


おっちゃんが、半眼で呻く。

やばい、即効でエメラルドの正体がバレた。


<称号『特別に勘が鋭い様ですね』を獲得しました[1]>


超不安。


「安心しろ。別に、奴等につき出すつもりは無い。あんちゃんが何かやっているのも分かっているし、その理由を言わないのも理由が有るんだろう。だから、何も聞かない。だがな……俺達にできる事なら何でも言え。人手が必要な事も有るだろう。俺は口先だけは達者な傾奇者で通ってる。理由を言わずに人を動かすのは朝飯前だ」


おっちゃんは、困った様に続ける。


「……顔は隠した方が良いんじゃねえか?」


「一応、黄昏の指輪というマジックアイテムは渡しているんだが。勘がいい奴には無効らしいな」


「……神話に出てくる、神様のお忍び用アイテムか。だが、俺ですら看破できるなら、気をつけた方が良いだろうな」


おっちゃんが困った様に言う。

ですよね。


やっぱり顔を隠して貰うか……


ともかく、当初の目的を。


おっちゃんに、材料の名前を記した巻物を渡し、


「これを集めて欲しい。なるべく自然に、関連性が分からない様に。報酬は、これをお金に変えられるか?」


ドサドサ


魔物素材、ガラスや金属細工のガラクタ、やや効果の高いポーション。


「ギルドからの持ち出しでも良いが、確かに資金が有るのは有り難い……」


おっちゃんは、適当に作った銅製の馬さんをうやうやしく持ち上げ、


「神代のアーティファクトか」


違いますけど?!

マジックアイテムとかじゃなく、ただの暇潰しです!


「いや、それ、ただの銅像で……」


ちょいちょい


エメラルドが、俺を上目遣いで見て、


「あの……ホダカ……それらの価値、分かっていますか?」


「いや、分かってるよ。だから訂正を──」


「その馬だけで、小さな家くらい買えますよ?」


?!


「ああ、これは相当な値打ち物だ。これも、これも凄い……」


おっちゃんが震える声で言う。

この世界の人の美的感覚にマッチしたらしい。


「あと、これなんて」


エメラルドが、漆黒の薬を持ち上げ、


「取れた腕が再生するくらい回復しますね」


「ぶっ」


おっちゃんがふく。

そりゃ、ポーションだからね。


「しかも、複数回……いえ、数十回使えますね」


「は?!」


おっちゃんが間の抜けた声を出す。

そりゃ、濃縮ポーションだから50回使えるよね。


「高く売れそうか?」


「世界の常識が崩壊します。回収して下さい」


ガチャガチャ


エメラルドが、効果高めの奴を、俺に押し付ける。

仕方が無く仕舞う。


「これだけでも、瀕死の重症を塞ぐ程の効果が有ります。セイクリッドキュアポーションの強化版……まあ、まだマシだと思います」


「……小さな城が買えるな」


おっちゃんが呻く。

大袈裟である。


「まあ、頼んだぞ、おっちゃん」


「ああ、任せとけ、あんちゃん」


おっちゃんが、にかっと笑う。


カランカラン……


入口に、懐かしい気配。

……まずい。


酒場にいたのは、花園。

……エメラルドが。


俺の対処よりも早く、花園がこちらに気づく。

頼む……エメラルドの正体がバレません様に。


「組長、珍しいな。女の子を連れて……華田に報告しようかな」


……くそ。

報告、だと……

既にバレているな。


速攻で捕まえず、まずは華田と連携するというのか。

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