第26話 あまた

<称号『はい。ぱんぱかぱーん。火鷹、貴方だけは、この世界で死んでも、元の世界、元の時間に帰るだけです。しかも、世界の未来や、死因に関係無く、地位名誉に金に美女……労せずとも集まる、強運を付与しましょう』を獲得しました[1]>


いや、この世界の……王女様やギルドマスターのおっちゃん、クラスメート達、全員助からないよね?!

というか、俺一人命を賭けてないって、その方が胸クソ悪いんだが?!


<称号『割り切って、愉しんじゃえば良いんじゃ無いですかね?ほらほら、王女様の不安な顔、そそりますよ』を獲得しました[1]>


ぐぬぬ……


「王女様」


「はい」


「世界を救おう。他の召喚者に比べれば、ゴミ同然の能力だけど……才無き身なりに、のらりくらり生きてきた。あんたの為に……いや、世界の為に、微力を尽くすよ」


「貴方は、私の勇者様です。貴方が力を貸して下さるなら、万人力です」


王女が微笑を浮かべ。


ああ、やっぱり可愛いな。


思えば、召喚以来、この王女様に心が囚われていた気がする。

街で美女を見ても心が動かなかったのは、既に心にこの姿があったから。


絶対に……護ってやる。


ふと、


「王女様、勇者、っていうのは?」


「神託によれば、ホダカ様で間違い無いとは思うのですが。伝承では、災厄が現れる時に現れ、世界を救うとか……七賢者による対処法との因果関係は分かりません」


一応、伝承にあるのか。

勇者っていっても、特に何も持って無いんだが。


「伝承によれば、勇者様は……死んでも、元の世界に戻るだけだそうです」


それな。


数多あまたの称号を持ち……」


そんなに無いぞ。


<称号『あまた』を獲得しました[1]>


入手した。


「そして、この世を創り給う御神と会話できるとか」


「……神様と会話、とやらはできないな。だが、その方法が分かれば、別の救済策を授けて貰えるかも知れない」


「ですね。各地の伝承を調べましょう。きっと……何か、御神の御言葉を賜る方法がある筈です」


それは……唯一の希望。


「あの……」


王女は、俺を上目遣いで見上げ、


「私の事は、名前で呼んで下さい」


……王女様、と外で呼びかける訳にもいかないか。


「分かったよ。よろしく、エメラルド」


「はい、よろしくお願いします、ホダカ」


--


「これが……ジェラドルの瞳」


災厄への対処。

ひとまずは、対処法が分かっている、病の魔王グネディアを封印する事にした。


対処法は、特殊なポーション。

素材も量も、半端無い。


最初の素材、ジェラドルの瞳。

黒いキノコで、特定の条件を満たす場所にポップアップするらしい。


感知スキルで場所のあたりをつけて探す……だが。


「ホダカ、凄いです!あと997個ですね!」


「そうですね!」


やってられない。


素材は7種類だが、必要個数が半端ない。

クラスメート達が本気ならすぐだったろうが。


しかも、今作っているのは、探査のポーション。

封印のポーションは、また別の素材。


こうしている間にも、別の災厄も動いていて……

やっぱり、俺には無理なのか?


<称号『画面右上にギブアップボタンを用意しました。押せば元の世界にいつでも帰れますよ』を獲得しました[1]>


[崩壊させる]と書かれたボタンが、視界の右上にある。

流石に本物では無いだろうが、悪趣味な冗談だ。


……そうだ!


<称号『押すのですね?』を獲得しました[1]>


押さねえよ。

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