第16話 彼女の名前はミレオン

「すまん。すぐにはお金が用意できないが、きっとお金は払う……」


おっちゃんが頭を下げる。

ごめん、金貨10枚すら出せなかったか。

ゴブリン退治って大変だね。


「それと……外にあったクエストなんだけど」


「また何かあったのか?!」


おっちゃんの顔が強張る。

運営資金に被害は無いから安心して欲しい。


「王女様、風邪なんだってな。薬、探してるんだろ?」


「ああ……あれか。ただの風邪であんな触れを……本当にあいつらは……」


おっちゃんが苦々しく言う。

いや、風邪って大変なんだぞ。

特定の病名ついてないし、専用の薬も無いし。


「これを渡してやってくれ」


「これは……?」


おっちゃんが首を傾げ、


「ふむ……?わしにも分からんの?」


白髪の青年も言う。


エリクサー。

持ちうる最高傑作。

風邪くらい治るだろう。


「王女様はちょっと面識があってね……あ、出処は伏せて欲しい。俺は……死んだ事になってるから、さ」


「……分かった。手渡す事はできると思う」


おっちゃんが重々しく頷き、震える手でエリクサーを受け取る。

いや、ただの最上位?ポーションに何雰囲気出してるの。


さて……


諸々のポーション、代金は工面次第らしいので、時間を潰そう。

そろそろダンジョンか?


<称号『そこの金髪の少女、盗賊ですよ。困っているようですね。話かけてみればどうでしょうか?』を獲得しました[1]>


……そうだ。

ダンジョンといえば、罠。


<称号『彼女の名前はミレオン。もはや、助けてくれる人に身を売ろうとすら考えています。才能もあるし、縁を結んで損はしませんよ』を獲得しました[1]>


よし、決まった。


「おっちゃん。あの娘、ミレオンの話聞くと良いよ。思いつめているようだけど……才能が有るから、助けたら将来有能な冒険者になると思う」


「おお、そうか」


おっちゃんがミレオンの方へと向かっていく。


次は罠……見えたぞ。


--


アクティブスキル、罠設置、罠解除。

パッシブスキル、罠発見。


44ポイント→14ポイント


「トラップ、アローシュート!」


設置。


「トラップ解除!」


除去。


MPが減る。


まだそこまでMP使わないので余裕はあるが、一応、回復の泉の傍。

そうだ、ここにホームを建てよう。


<称号『PTのススメ。PTとは、それぞれ、苦手なものを補いあうものです。また、複数人いれば、単独ではなし得ない様々な事を可能にするのです。是非、積極的にPTを組みましょう』を獲得しました[1]>


俺は、生涯ソロで行く……PTを追い出されたあの時悟ったんだ。

俺は、誰にも頼らない。


<称号『PTを追い出された過去は無い筈ですが』を獲得しました[1]>


実は、異世界転生はこれが初めてじゃなくてね。


<称号『これは異世界転移だし、貴方は生まれてからこれが初めての異世界転移ですよね。前世以前も、ずっと地球ですし』を獲得しました[1]>


ゲームで。


<称号『追い出されものはやってないですよね』を獲得しました[1]>


小説で追体験。


<称号『……それはめっちゃ読んでましたね』を獲得しました[1]>

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