第9話 フラグブレイカー

ともかく。

すいてるのでおっさんの列に並ぶ。


<称号『フラグブレイカー』を獲得しました[1]>


俺がいつフラグ壊したああああああああ!


すぐに俺の番になり、


「おう、どうした。見かけねえ顔だな」


「あ、はい。実は、田舎から一山当てようと思って出てきたんです」


「ああ……お前もか……最近多いんだよな……」


おっちゃんが、しんみりと言う。

田舎の過疎化……

異世界でも同じか。


「税金が高過ぎて、冬を越せねえから、村の為に出稼ぎ……大きな声じゃ言えねえが、ここ最近は本当に厳しい……」


悲しい話だった。


「国外に逃げたら、親族に罰金……払えなければ奴隷落ちすら有り得る……冒険者はまだ税金がマシな方だから、あんたの選択は正しいぜ……変わりに、命を賭けるけどな」


「ああ、覚悟の上だ」


危ない事はしないけどな。


「故郷への送金も、うちが窓口になるから、気軽に相談してくれ」


「有難う」


異世界転送してくれるの?


おっちゃんは、内部の職員に声をかけ、カウンターを出ると。


「初回登録は時間がかかるからな。向こうでやるぞ」


そう言って、酒場のテーブルを指差す。

入れ替わりに入った受付のねーちゃんが綺麗で、横の長蛇の列から浮気者がちらほら出現した。


--


「得意技……」


渡された用紙に、スキル等を自己申告するらしい。

任意らしいので、何も記入しない。


パッシブスキルは全解除。


あとは魔力量は水晶で調べ……


「ほう、MPが結構あるな」


最大MP強化は外したけど。

意外と多かったのかな?


「最初はみんなFランクから。実績に合わせて推薦、試験クリアでランクアップ。場合によっては一気に数ランクアップさせる事もある」


しばらくはFランクで良いかな。


「Bランク以上になれば、指名依頼も発生する。断っても良いが、報酬は高いし、ギルドからの評価も上がる」


Cランク以下が良いな。


「ほれ、お前さんの魂で認証したギルド証、身分証明書になるから無くすなよ」


「有難う」


F、の文字。

ではなく、変な文字。


F、と認識しているだけで、実際の文字も発音も違うのだろう。

所謂、異世界言語理解という奴だ。


「あんたが望むなら、技能を見て、ランクアップもできるが……どうする?ランクが上がれば、紹介できる仕事も増えるぜ?」


「まだ村から出てきたばかりだし。戦い慣れてもいないので、また今度にします」


「そうか。まあ、再評価して欲しくなったら相談してくれ。ランクアップは、基本は職員からの推薦だが、再評価の仕組みは有る」


功績積み上げ、的なものでは無く、純粋な実力の物差しなのかな。

もちろん、人格面も考慮されるのだろうけど。


あ。


「素材買取もお願いできますか?」


宝石を出し、テーブルに置く。

実際には空間収納してあるのだが、空間収納スキルが一般的か分からないので、念の為保険だ。

予め、ポケットに出現させておいた。


「嘆きのルビー……高位のアンデッドのドロップ、お前さん何処でこれを?」


「落ちていたんです」


じっ


おっちゃんは、俺の目を見て、


「嘘だな。実力を隠しているな?ランクを上げればメリットは多いし、冒険者のスキルは秘密にする。もう少し、うちを信用して欲しい」


く……


<称号『やーい、バレた』を獲得しました[1]>


くそう。

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