第10話 行間を読む漢

アクティブスキルは、火属性魔法だけ使い。

剣修練をセットして……


「分かった。査定を頼む」


素直に、そう言った。


--


「踏み込みが甘い!恐れるな、もっと鋭く!」


叱咤の声。

連れられた先の部屋、金髪碧眼長身のイケメン。

力を見て貰っているだけの筈が、散々痛めつけられている。

掛かってこい、と言われて……あっさり返り討ちにあって。

そのまま小一時間。


「筋は悪くない。良かろう、これからも稽古はつけてやっても良い。だが、自分の実力を過信するなよ」


先程とは違い、優しい先輩の様な目で俺を見て──


「あの……それで、査定は?」


「査定?」


「おい、ライルよ。新人のランクをはかって欲しい、と依頼した筈だが」


おっちゃんが半眼で問うと、


「勿論、貴方がそう言ったのは覚えている。だが、私は行間を読む漢。こいつは見込みが有るから鍛えてやってくれ、そう判断した」


「言ってないぞ」


「ふふ……まあ、そういう事にしておこうか」


それで、ランクは?


「まあ、Bで良いんじゃない?」


「B……想像以上だな、こいつは」


おっちゃんが頷く。

F→Bまで一気に。


丁度良い。


「それで、素材の買取は御願いできるのか?」


「ああ、すまないな。さっきの宝石と……他にあるなら、今出してくれ。大丈夫だ、何が出ても驚かんし……俺もライルも、口は硬い」


「じゃあ……」


どさどさどさどさ


骨の破片や、朽ちた剣、安物の宝石、狼の牙……

空間収納の容量にも限界があるので、あまり価値が低い素材は入れていないが。

まあ、5割近く、魔力回復の泉の水を入れてあるのが原因ではある。

生命力回復の泉も欲しいなあ。


「……おい、おやじさん」


「……まさか、空間収納まで使うとは……いや、詮索はすまい」


やっぱりレアスキルかあ。

気をつけよう。


「このタイミングでこの実力……そして、世間知らずっぽい印象……」


「ライルよ。お前もそう思うか……淀んだ負のエネルギーとか言ってたしな。高位不死系の素材が多いのとも符合する」


何故か話が盛り上がっている。


おっちゃんはこちらを向くと、


「あんたの事は詮索はしないし、秘密は守る。助けが必要であれば何でも言ってくれ。勿論、この素材は買い取ろう。そうだな……正確な額は査定が終わってからになるが、とりあえず金貨10枚渡しておこう。残りは、査定が終わってからだ」


「分かった。有り難う」


何を勘違いしたのかは分からないが、俺にとって都合が良い状況になったようだ。

火の魔法は使う機会が無かったが、わざわざ俺から見せる必要はあるまい。


「そのプレートは、Fランクのままにしておこう。実際にはBランク、手続きが遅延している、とでも言えば良かろう。無論、Bランク相当の待遇も受けられるようにしておくし、言ってくれればそれ以上の事も相談に乗る」


「何から何まですまないな」


Bランクより、Fランクの方が都合が良い事は多いだろう。

何より、目立たない。

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