第5話 甘えん坊の精霊と魔術を持たない将軍
コールスロウズさんのお宅に一晩泊めていただく事になり、大家族での食事が始まる。
山の幸──何種類もの茸、魔術で撃ち落とされた綺麗な身を余すところなく調理された山鳥、山菜、川魚。
どれも新鮮で、コールスロウズさんと、下の息子さんが、山のパトロールのついでに、必要分だけ採取してくるものらしい。
上の息子さんは、村で茸や川魚を村長さんの娘さんの食品店に卸したり、一部を調理して露店で売ったりしているけど、下の息子さんは、コールスロウズさんに付き添って、山の管理を手伝っているんですって。
その仕事は多岐に渡るそうだけど、中でも、コールスロウズさんは、木霊と共に、穢れ溜まりを見つけて、木霊の治癒力を活かして穢れを弱らせるのが一番大切な仕事。
「光の精霊のように浄化は出来ませぬが、木の薬効や自浄能力を魔力に替えて、癒す力を転用するんですじゃ」
コールスロウズさんの肩で、小鳥の姿をした木霊が、頷いている。可愛い。
「昔は、精霊の
「いつの頃からか、巫女と呼ばれる特に光の精霊との交流が深い者だけが、誓約した聖騎士と、国中を浄化討伐の旅に出ると言う事に変わりましてな」
メイベルさんは、下の息子さんの末娘で、コールスロウズさんの血を引く人達の中でも一番、精霊と交信する力を強く受け継いでいる。
「お爺ちゃんが引退する頃には、私が、森を、村を守っていけるようになるように、今もお手伝い修行中なの」
「あの、そのお役目、私も一度ご一緒させて貰ってもいいですか?」
「勿論よ。お爺ちゃんやお父さんと一緒も楽しいけど、若い女の子と一緒ならもっと楽しくお役目が出来そうよ」
明日は、天気も悪くないとの(サヴィアンヌの)予報なので、一緒に山に入ることにした。
お二階の、メイベルさんのお部屋で泊めてもらうことに。蝶になっているサヴィアンヌはともかく、男性のシーグも一緒でいいのかしら……
あれ以来人型をとらないので、私も、夢か間違いだったのかなとか思うくらいであるし、ここの人達は、ただの精霊と仲のいい狼犬、くらいにしか思っていないだろう。
カインハウザー様のお下がりのシャツとズボンを穿いて、メイベルさんのベッドに一緒に入る。
シーグを外か犬小屋に行って貰うべきか悩んだけど、彼は私から離れたがらないし、ここの人達は犬だと思っているので、クーリーと一緒に、ベッドサイドの床に毛布を敷いて寝てもらうことに。
勿論、サヴィアンヌは
「明日がとても楽しみです」
「私もよ。こんなに可愛い
アリアンは、最初、私の胸のあたりに乗ってきて(精霊なので重さは感じない)正座して私を見下ろしていたが、急に顔をあげると、《セル》とだけ呟いて、どこかへ姿を消した。
もしかして、カインハウザー様が恋しくなって、お屋敷まで帰ったのだろうか……
アリアンロッドは、その誕生の瞬間、精霊眼や霊力を共有していたせいか、異常にカインハウザー様に懐いていて、首に縋りついたり、背に張りついたり、膝に乗ったり頰ずりしたりする。
精霊に好かれる体質──魂の香りや霊気の質が精霊に好まれる──のカインハウザー様だから、精霊であるアリアンロッドも反応しているというだけではないように思う。
「大精霊さま、どこかへいっちゃいましたね」
「ええ。風の性質のせいか、時々ふとどこかへ行っちゃうんです。砦の人達が大好きだったので、顔を見にいったのかも」
メイベルさんは、アリアンロッドの姿がすうっと消えて気配も消えたのを心配したのだろう。
「アリアンは、風だけじゃなく水と光の性質も持ってるので、滅多なことにはならないと思いますし、大抵すぐ帰ってきます。
用がある時は、喚べば一瞬で帰ってきますし」
「そうなんですね。
あの、失礼ですが、お差し支えなければ……
大精霊さまの呟かれたひと言『セル』って、城砦都市のご領主カインハウザー様の事ですか?
確か、ご本人は魔術は扱えないものの、とても精霊に愛される方だとか……」
「ええ。カインハウザー様の霊気の質が精霊に好かれるのは、そんなに有名なんですか?」
「
やっぱり、強くて格好いいんだ……
メイベルさんと目を合わせ、乙女モードで微笑み合ってから、目を閉じる。
──なんだか、いい話が聞けたな。今夜はカインハウザー様の夢が観れるといいな
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