21 第一話攻略RTA 魔を産む者
陣形を構えて俺を迎撃する3人。
即座にゲートを発動し俺の動きを妨害する3人。
そして、ゲートをくぐってもう発動している3人。
隙が無い。が、読めている。
これだけ人数がいるのならそりゃやるわ。俺だってそうする。
だけど、それはまだ常識的な行動だ。
いきなり6人の戦闘不能のリスクは抱えないだろうから、いまゲートを使っている6人は中期戦、長期戦型のゲートだろう。ならば、純粋パワーでのごまかしはそうそうない。
なので、フェイントを絡めて迎撃役の三人をすり抜け追い風に乗り、ゲートを使った3人の後ろに滑り込みその命を狙う。
一人の首は跳ねられたが、なかなかどうして反応が早い。二人には躱された。そうしていると壁を作っていたの3人ゲートが彼らを潜り抜ける。
やはり中期戦タイプ、あまり姿は変わらない。いや傾向なんか全然知らないんだけど。
そうして、六人がゲートを潜った瞬間に、ゲートで作った風の刃に力を込めて、全力の殺気で全員を狙う。
そして、それだけ俺に集中するならば
狙っていたコイツは必ずやってくれると信じていた。
「
そして、アルフォンスは鎧の剣士と化し、光の剣で騎士達九人を一撃で叩き切った。
だが、防御の力があるのかわからないが2人生き残った。そして、その2人は別々に分かれて死んだ人々に触れていく。
すると、触れられた騎士はどんな身体からでも元に戻り、再び剣を取った。
「ざけんな手前⁉︎蘇生とかなんでもありか!」
「恐らくは魔生物の類! 体に魂がそれほど紐付いていないのだ!」
「どっちにしても治療役のどっちかを確実に仕留めるぞ! 俺は右!」
「任された!」
そうして駆け出すアルフォンスと俺。だが、そこを止めるのが重力結界。前回の俺を殺したゲート使いだ。似たような鎧だからわかんねぇんだよ手前ら!」
「だけど、そいつに対しては対策済み!」
そうして、風を解き放ち全力で横に飛ぶ。
俺の死に方を三人称視点でみたところ、どうやら奴の重力は近づけば強なるが、さほど範囲は広くないらしい。なので、風に乗せた緊急回避用の出力で重力に逆らって飛び、重力に関わらない初速を手に入れる。
そして、死んだ騎士達の1人をその重力の中へ放り込む。そうすると、命に守られていない脆弱な身体は潰れていき、消滅した。
ログアウトと同じような現象。つまり
あの蘇生は、無条件ではなかったようだ。
それが分かれば十分。重力高いは今のところ無視して、蘇生役を狙って斬りかかる。だが、腐っても騎士、生きる意志の籠もった剣術で俺の剣の斬撃を抜ける。だが、切れ味だけでその剣は切り飛ばせた。
「良いものもらい!」
そして、回復役に蹴りを放つフリをしながら風で切り落とした剣の刃先を拾い、重力使いの上空へと蹴り飛ばす。
すると、狙っていたらしいイレースさんの矢が重力使いへと放たれる。込められた力から警戒し当然重力で逸らすが、すると上空で飛んでいた刃先が重力に引かれて凄まじい速さになり鎧に突き刺さる。
そこに戦闘スタイルがイケメンのグラップラーユージが飛び込んできて、燃える拳を叩き込んでそいつを仕留めた。
なので、後顧の憂いなくしっかりぶっ殺す。蘇生などさせてやるものかよ! まぁ重力さん拳の所から焼け死んで消えたけど!
だが、コイツの首を飛ばしてもコイツは死にはしなかった。
目を離したわけではない。気付けば繋がっていたのだ。頭が。
そして、剣がいつのまにか戻っていた。
「どういうカラクリ⁉︎アルフォンス! こっちは殺しても死なない!」
「こっちもだ! 再生能力のゲートにしてもかなりおかしい!」
「ならコイツらは!」
「僕たちに任せてよ。何もさせなきゃ良いんでしょ? この2人に。ボコり続ければ誰かが見つけてくれるよ弱点を」
「頼む! ユージさん! じゅーじゅんさん!」
「構わないからゲートの開き方教えてね! やってみたいから!」
「俺も頼む!」
「へいよ!」
「ああ!」
そうして、俺とアルフォンスはゲートを潜った短時間型と相対する。
こいつは、肉体が竜の鱗に覆われた巨体へと変化した。うわめんどくせぇタイプ! 大きいやつは基本的に強いんだよなー。
「竜の鱗は
「うわさらにめんどくせぇ!」
そう言いながらドラゴンマンへと接近し、足に剣で打撃を当てる。風で切れ込みすらは入らない。切実に硬い。
そして、即座に反応して剣を返してくる反射もある。受け流した感覚では、力はアルフォンス以上、スピードはアルフォンス以下。
時間が同等と考えると、どうにかして騙し討ちするしかないだろう。でなければアルフォンスが時間切れで死ぬ。
『さて、それでは奴を倒す作戦を提示しましょう』
メディさん! これでかつる!
『褒め称えてください。奴は、鱗で覆わていない部分はほとんど人程度の耐久力です。なので、急所から風の刃を入れ、体内を切り刻むのがよろしいかと』
ああ! つまりそういう事か!
瞬間、アルフォンスの剣が奴の剣とぶつかり合い、力と技の戦いが始まった。
なので、スルッと後ろに回って剣を突き出しながらこう言い放つ。
「
『素敵に馬鹿なセリフですね。嫌いではありません』
だろ?
というわけで、剣に込めた風の刃を拡散させて、奴の腹を吹き飛ばす。ガワは鍛えられても、中は鍛えられない。そういう事のようだ。
『そういえば、内容物の飛散がありませんね』
……あー、こいつ何も腹に入れてなくてよかった!
『何も考えていませんでしたね』
仕方ないじゃん! ノリで動いてるんだから!
そうして惨たらしく死んだコイツは消え去り、残りの騎士はあと回復コンビだけ。
そいつらもいつのまにかボコボコにされ、命を奪われていた。あの2人強いわ本当。思わぬ拾い物?
「さぁ! 本番始まるぞ! 絶対逃すな! 囲んでボコって俺たちの勝利だ!」
「そう易々とは、いかせないさ」
そんな事を言ってきたのは、狼。しかし、影でできた人の顔を体に生やしている。
あ、コイツ死ぬと分かって全力で道連れ取りにきやがった。
それはそれとして、いうことは一つ。
「その造形正直引くわ、デザインの趣味悪いんじゃない?」
「作る! 時間が! なかったのだ! どこかの連中がやってきたせいでな!」
「そいつは不幸なことで。お詫びにあの世への特急券をやるよ。なに、痛いのは一瞬だ」
「それはもったいないんじゃない? 鈍行列車で勘弁してあげましょうよ。せっかくだしいっぱいのアトラクションを体で感じさせてあげないと」
「ですわね、経費分の面白さは提示して頂けなければ動画映えしませんもの」
「貴様ら本当に心が邪悪だな!」
「だが、味方であるなら心強い!」
そうして、この場にいる全員の剣気が満ちる。
そんな中、王気を放ってやってきたラズワルド王に自然と目が行く。
その姿は壮健ではないが、しかし強者のものであった。
「アルフォンス、そのまま聞け」
「父上……」
「これより、王認の儀を行う。その大魔シリウスを斬る事、それがお前への最後の試練だ。お前が持っている聖剣で、その意を示せ」
「ハッ!」
そうして、アルフォンスは真っ直ぐに澄んだ心でシリウスと向き合う。時間はどれくらい残っているだろうか?
『おそらく、1分はないかと』
「なら、構えておくか」
「頼む。これは僕の試練だが、それを理由に僕の聖剣を曲げてたまるものか」
「へぇ、そいつはどんな?」
「守り抜く、覚悟だ!」
そう言って、アルフォンスはシリウスと相対する。その中で、3人動き出した奴がいた。
炎の拳を構え、シリウスの逃げる動きを制限したユージ。
メイスを構え、シリウスが止まれないようにぶん投げたじゅーじゅんさん
そして、上段の構えから力を込めて、ひたすらの殺気を放った俺。
3人の援護により、前にしか出れなくなったシリウスはその通りに前に出て
アルフォンスの最高の一閃によりその命を絶たれた。
「これで終わりだ!」
そう叫ぶ、アルフォンスはまさしく希望を受け止める王の器だった。
そのあとすぐにぶっ倒れたのだけど、その顔はやはり笑顔だった。
⬛︎⬜︎⬛︎
しかし、それで終わるのならこの件はもっと簡単だったのだろう。
ガス欠で倒れた皆。そんな中で結晶が割れて、1人の影が出てきた。
魔物を作った者とは違い、ただそこにいるだけで死を感じさせる強大な
「来たか、魔国の」
「私が出張るほどの事とは思わなかったよ。シリウスには期待していたのだが、所詮は影か」
「貴様とて、影だろうに」
「その通りだよ」
「だが、今の年老い聖剣を失った貴様ならこの影で十分よ」
「ほう? 私の聖剣ならここにあるが?」
「馬鹿を言え。私が言っているのは本当の聖剣だ。かの一族が守った生命を未来に繋ぐ奇跡の剣。……単刀直入に聞く、今アレはどこにある?」
「さてな。あやつの動向など私が知るものか」
「……出張る意味は本当になかったな。予想はしていたが」
そんな、大事なキーワードばかりの会話と、その間で交わされる凄まじい剣気の応酬で俺たちは黙らされていた。下手に動けば、命は無い。それが分かっているのだから。
「なら、せめて次代の命だけは奪わせて貰おうか!」
「させるものか!
そうしてぶつかり合う二つの剣。どちらも無骨で、戦う以外の用途には使えそうには全くない。
だが、それはどちらも命に溢れていた。
そして、位置取りの関係で一手無理をした王は、奴の剣を防ぎきれずにいたが。
こんなときでも、命を捨てて戦う事を基本にしていた奴がもう動いていた。
「動けるプレイヤー! 運ぶのと肉壁に!」
そう言ったのは、本日最多死亡回数を誇るゾンビアタッカーのフーさん。
その体は、奴の剣を体を使って受け止めていた。
「皆さま! 動きましょう! 我々は、死んでも勝ちに繋げられるのです!」
次に動いたのはドリルさんと長親さん。フーさんの体を貫いた事で鈍ったその剣をドリルさんと長親さんの槍で叩く。そしてメガネさんがアルフォンスを抱えて騎士達の方へと走っていく。
そうしている姿を見た奴は、闇の斬撃を雨のように放ったが、プレイヤーの全力がそれぞれを弾いて、受け止めて、アルフォンスへの一撃を塞いでいた。
そして、どうにかしているうちに影はラズワルド王に一度斬り殺され、再生した。
「……このように、影の連中はただ殺すのでは死なない。だからよく見ておくように。少年、アルフォンス、君たちにこれからの戦いを任せるよ」
そう言って、ラズワルド王は影の腹に絶死の一突きを放ってから、ひたすらの
そうして残った黒の結晶体を見せて、それを両断した。
「これが、奴らの殺し方だ。この影のように臓腑の中に結晶があるとされる者、獣の群体の中に1匹だけ違うモノがいる事、様々だが、それでも核を殺せばどんなルールで生きている者とて殺す事ができる。それが、大魔の殺し方だ。だから、戦いの中で謎を謎のままにするな。考え続けて、見つけ出すのだ、敵の殺すべき核を。それが、大魔と戦うという事だ」
「では、言うべきは終わった。エリーゼ、ロドリグ、後事を託す」
「「王命、承りました」」
その言葉と共に、王の鎧は消え去り、安らかな顔で王は生き絶えた。
俺たちを通じて数多のプレイヤーと、数多の騎士達にその大切な言葉を託して。
⬛︎⬜︎⬛︎
《Congratulations!》という言葉が、視界の脇に見える。
「なぁダイハさん。どうにかならないのか?」
「私は、沢山の死にかけた奴を見たわ。けど、私には初めて王を見た時からこの人が助かるとは思えなかった。だから、使い切るように告げたのよ」
「ま、しょうがないか」
そんな会話の中で、今までのログアウトとは違うゆっくりとした消え方で、俺たちはこの世界から消えていった。
「じゃ、多分また来るよアルフォンス。今度会うときもロク事にはなってないだろうけどさ、また会えたら嬉しいよ」
「ああ、救国の稀人達よ、いつかまた」
そうして、俺達少ない生き残りは帰って行った。
あの、黒い部屋へと。
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