未来から届いた写真II
窓の向こう側には、50センチほど隔てて隣りの家の窓が見える。そのため俺の部屋は二階にあるにもかかわらず光が入らず、カーテンを開けても全く開放感がない。田舎中の田舎、土地が有り余っている中、何故こんな家の建て方をしたのか分からないが、何を隠そうこれが西の家だ。そのおかげというのも何だが、玄関を通らずにお互いの部屋を行き来できる。
俺はいつものように、ガラス瓶に集めておいた小石を西の部屋の窓に向かって力がいっぱい投げつけた。当たり前だけど石の大きさがポイントだ。小さければ気づかれないし、大きければ当然窓が割れる。長年の勘といったところか、今では手に持てばすぐに分かる。電話やラインよりこちらの方が断然早い。
十秒後、、、「なんか用?いんちょ」
西が窓から眠そうな顔を覗かせた。
「にっしー、ちょっとこっちに来てくれん?」
俺がそう言うと、西は慣れた手つき、というより足つきと言うべきだろうか、ベランダの手すりを乗り越え俺の部屋に入ってきた。
「で、なんよ?」寝起きで機嫌が悪そうだ。
けど、西とはそんなことに気を遣い合う間柄ではない。
「こんな薄気味悪りぃ写真送ってくんなよ。これ、お前のいたずらやろ?」
俺がそう言いつつスマホを西に差し出すと、やはり不機嫌そうに、
「は?写真?そんなん知らんし。」
「ほら見ろ、送信元。これお前のパソコンのメールアドレスやろ?」
「俺、本当に知らんよ。じゃ、ちょっと待っとって」
西はそう言うと、再び手すりを乗り越え自分の部屋に戻って行く。三十秒程で戻ってきたが、その右手にはラップトップパソコンが握られていた。
「ほら、ここ一週間、パソコンからメール送っとらんし」
と言ってパソコンを差し出す西。パソコンの画面を覗き込むと送信ボックスにあった一番新しいメールの日付は確かに一週間前。
「お前やないってこと?じゃ、この写真は誰が」
西は俺の手からスマホを取り上げ、その画面食い入るように見ながら、
「この写真おかしくね?去年の集合写真撮った日って…」
きた!!俺はやっぱりそうだろと思いながら、
「雨だったろ?」
と西が言い終わるのを待たずに割って入ったが、西の言わんとしていたことは全く違っていた。
「いや、、、いんちょ、覚えとらん?俺、この日休んだやん」
そうだった。その日は滅多に学校を休まない西が親戚の葬式で休んだ日。俺は慌てて西の手からスマホを取り写真を確認した。信じられないことに、写真の二列目の左端に西が写っている。
「じゃ、一年の頃のとか」
「違うよ。だって、この写真、しょーご、ごっぽ、チェンコとかおるやん」
確かに二年から同じクラスになったメンバーの顔もある。いつもは適当に振る舞っているが、ここ一番って時の西の頭の回転の速さには目を見張るものがある。俺が黙って感心していると、西は何かに気付いたようで、
「この日付、、、一週間後やん」
一週間後って未来?今どきドラマやアニメでもそんな設定ないやろ。と心の中ではすぐにツッコミを入れたが、その気味悪さに俺は声を出せなかった。一方の西はひょうひょうとしていて、
「それはそうと、いんちょさ、この夏川って知ってるん?」
西に促されようやく俺の声が戻ってきた。
「俺は知らん。ってことは、にっしーも知らんのか。どうすればいいんかな?」
「待つのはどうやろ?集合写真撮るまで何もなけりゃ、いたずら。あったら、そん時に考えることにせん?心配せんでもなんもないよ、多分」
他人事だからか、やけに冷静な西。このメール、元々はお前から送られて来たんだがと思わずツッコミそうになった。結局西はいつものように「ばーい」と言い残すと、早々に自分の部屋に引き上げて行った。今から春休みの課題をやるらしい。気付くと机の上に置いてあった俺の春休みの課題が消えていた。さすが、情報屋の名は伊達じゃないな。一方、俺の方はというと、基本的にビビりな性格、これから一週間頼むから何も起こらないでくれと祈っていた。でもそういう時に限って何か起こるような。
春休み最終日はこうして過ぎていった…
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