第9話 『怒り』以外無感情な夫

 夫は愛のささやきをしません。

 普通に「好きだよ」も言いません。


 しっかりしたプロポーズすらありませんでした。


 酔った時に、じゃれてくるぐらいです。


 普段の生活では笑顔ですら貴重です。


 それぐらいに【怒り】以外の感情を面に出す事があまりありません。


 それでも私は夫の感情に対してアンテナを張らして、様子を見ますし

 ちょっとした笑顔が出ようものなら、とても嬉しくなります。


 たまに、ご飯を食べながら「にっこにこ」している時があって

 別に、面白い話してたわけでも見てたテレビがそれだけ面白いからでもなく

 純粋に食べ物が美味しい、それだけなんですけど


 50手前のおじさんの笑顔とは思えない満面の笑みをされると、例えそれが外食時であっても恥ずかしさより

「ああ、幸せだな」

 という気持ちが勝ります。


 それだけ夫は【怒り】以外はあまり出さないし、たまに出る笑みは

 私の最大のなごみになります。


 別にモラハラ夫で、いつも怒ってばかりだから

 たまの笑顔は救われる、というわけじゃないですよ。


 夫の事をそのまま書こうとすると、モラハラ夫に間違われそうになりますが

 決してそんな事は無いのです。

 私も結婚当初は少し不安になりましたが、ただ不器用で恥ずかしがり屋なだけなのです。



 そんな夫が昔、酔った時に何度か


「ピューレラがいないと生きていけない」


 と言った事がありました。


 その当時は、嬉しい反面、適当に言っているだけだろうと(まぁ照れもありましたが)


「うそつけ」


 と返していました。


 だけど、その言葉を言ってくれなくなった今、とてもその言葉が欲しいです。


 私は年々夫の事が好きになっているけれど

 夫は年々、私の事をどうでもよくなっているかもしれないし不安なんです。


 昔のあの「ピューレラがいないと生きていけない」の言葉の貯金は

 もうつきかけていて、【怒り】以外の感情の少ない夫なので

 なにげない意地悪な言動でも本気で傷ついてしまうのです。


 いやダメよ、夫の事を信じて大丈夫でいてあげないと

 夫は冗談じゃなく、本当に私に冷たくなってしまうかもしれない。


 そう思いながら、不安な自分を奮い立たせている状態です。


 ですから、これまた毎度の宣伝になってしまいますが

 ユーチューブを始めて良かったと思います。


 だって、ちょびっとだけど笑ってるし笑顔出してるよね、夫。

 それを見れるし引き出せるんだから私にとっては癒しの一つなんだと思います。

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