第67話 活動再開

 年が明け、僕は少しずつ焦ってきていた。翌年の六月に行われる補欠選挙への立候補を考え始めていたのである。

 応援してくれた人たちの涙や手の温もりが、未だ忘れられずにいた。補欠選挙の話を聞いたとき、胸の奥に眠っていた情熱に火がついた。

 負けたままでは終われない。支持者に悔しい思いをさせたまま、おめおめと引き下がれない。そして、自分がこの市に必要であるか、もう一度審判を仰ぐ絶好の機会だと思う。補選まで、一年半もある。星野川市の将来に対する自分の志を伝えるのに、十分な時間である。

 活動に専念するために、会社を辞めたいと思うようになっていた。会社での経験を活かし、星野川の情報誌を制作しようと考えた。取材に回ってPRに努めれば、自然と僕の思いが伝わるはずだ。

 二月、情報誌を作る仲間を探していると、図書館に勤める知人から、星天堂番頭の川岸さんに頼んでみてはどうかと教えられた。川岸さんは大路通りで文房具店を営んでいるという。図書館から直接、その店に向かった。

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