第十四章
第十四章 絶望と希望のメッセージ
数日前の楽しさが、まるで嘘のようだった。今の四人は、一体どうだ。一歩通行の感情が苛立ちを生む。我慢しきれない感情が溢れそうになる。恋にぎくしゃくしていただけなのに。いつの間にか友人としての関係にまで、それが影響し始めていた。そんな中、一通のメッセージが四人を掻き乱し始める。
文人は、朝から憂欝になっていた。仕事初めだと言うのに、直ぐには昇華出来そうにないメッセージを受け取ったのである。大人の対応を心掛けたが、それでも苛々は治まらない。どうしてこんなことを言うのだろう。いくら考えても、要因が見えてこない。仕事をしていれば流石に薄れていくが、味のないガムをいつまでも噛んでいるような不快さが残っていた。
一人で苛々しながら、何とか店に立っている緋菜。朝のうちに受け取ったメッセージが、それを助長していることは分かっている。仕事は仕事、と割り切っているのに、引き攣った笑顔を貼り付けている。何とか笑って接客したのに、店長に叱られていた。もう君は新人じゃないんだから、と。何だか今年は上手くいかない。私の何がいけないの?自問自答を繰り返しては、何かに答えを縋っていた。
連休明けの保育園は大変だったが、昌平は随分さっぱりした気持ちで居た。緋菜のことは、もう友人だと考えられる程に落ち着き始めている。それは、父親と昔のことから今のことまで話をし、部分的な空白が埋まって行ったからだった。しっかり言葉にしたことで、昌平の中が整理された訳である。そんな昌平に、終業時に一通のメッセージが届いた。一瞬悩んだが、素直に返信をする。そして、待ち合わせ場所へ急いだ。
学生の話を聞きながら、陽は征嗣からの返事を待っていた。文人からの誘いを相談したのである。形式上そうしているだけだとしても、重要なことだった。緊張しながら待っていた陽に届いたのは、彼からではないメッセージ。それをすぐに確認すると、大きく溜息を吐いていた。
皆に届いたメッセージ。それは希望の輝きの中で見た絶望か、絶望の淵で見た希望か。それともただの、無心の知らせなのか。たかだか一言、二言のメッセージが、四人の間に隙間風を吹き込み始めた。そんな仕事初めの日のことである。
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