第十三章
第十三章 すれ違ったり、通り過ぎたり
新しい年を迎えた時、あんなに楽しそうに笑い合っていたのに。それが嘘のように、四人共ピリピリとした朝を迎えていた。別れる為の挑戦を始めた陽と文人。それから、瑠衣に会ったことでギクシャクしたままの緋菜と昌平。スタートラインに並んだはずが、歩幅が微妙にズレていく。
人も疎らな電車の中、また一つ大きな溜息を吐いた。あんなにの楽しくて、あんなにドキッとしていたのに。今そんな気持ちは、波が引いたように消えてしまっている。
一度冷静に考えよう。友人として仲直り出来たとしても、恋という感情に戻れるのかは分からない。戻れなくてもいい。昌平は、そう考え始めていた。
仕事初めだと言うのに、緋菜は不機嫌だった。瑠衣に会うまでは、楽しくて、幸せだななんて思っていたのに。そんな気持ちは直ぐに飛んで消えた。
あんな平凡な女の何が良いのだ。私の方が若いのに。私の方が綺麗なのに。内心ではずっと、そんな醜いことを思っていた。このままじゃいけない。そう思いながらも、自分から連絡はしたくない。そして緋菜は、陽に連絡を入れるのである。
緋菜からメッセージが着いた時、陽は陽で思い悩んでいた。それは勿論、征嗣のことである。
陽が彼と別れる為に、文人が行動を起こしてくれた。征嗣はどうするだろう、と不安もあった昨夜のこと。電話が鳴ったのである。探りを入れようとする征嗣を上手くかわしたつもりでいたが、それで簡単に納得するような男ではない。今度はインターホンが鳴る。時間を作って、わざわざ昼間にやって来たのだ。そして陽は、覚悟を決める。
日も暮れ始めた頃、文人は携帯を見つめていた。少し後になるだろうと聞いていた返事が、もう送られて来たのである。
何度も読み返して、噛み砕く。何かそこに秘められているのではないかと疑っているのだ。文面は体裁の整った物だったが、何か嫌なものを感じる。まさか既に陽に会ったのか、と青褪める文人。だけれども、陽とした約束がある。連絡することも出来ず、文人は懸命に頭を働かせた。
幸せの尻尾を掴み掛けていたはずなのに。四人はそれぞれ、悶々と自問を繰り返している。少しずつ何かがズレ始め、不穏な空気が流れているようだった。そんな一月三日の話である。
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