第十一章

第十一章 新年の願いを

 昌平と文人の勇気に、緋菜と陽が応じた大晦日。それぞれが新たな決意をもって、年を越すことになった。

 緋菜と昌平が部屋に戻るところから、話は始まる。


 昌平は、サラリと緋菜を誘えた自分を讃えていた。陽に報告をしたいけれど、彼らの様子も気になる。何故ならば、部屋に戻った時の二人は何の変化も見られなかったのだ。ただ普通にワインを飲みながら、本を読んでいたようにしか見えない。特に気恥ずかしがるような様子もなく、昌平の方が拍子抜けしていた。


 そして年が明け、四人は初詣に向かう。その道すがら、陽は緋菜から報告を受けていた。昌平に誘われた、と。何を着て行こう。どうしよう。焦るばかりの緋菜を宥めながらも、責付くことも忘れない。そう出来る余裕が、自分の中に出来たからだった。陽はいつもとは違う何かを感じている。それは、征嗣と別れる為に力強いサポーターを得た安堵だろう。


 文人は真剣に、新年の願掛けをしていた。一筋縄でいかないことは、分かっている。それでも傷だらけの陽を目の当たりにして、心に誓ったのだ。使命感だとか。偽善者だとか。どれにも当てはまるようで、どれでもない。ただ純粋に、陽をそこから掬い上げたい、と思っているのである。


 初詣を終え、陽は真っ直ぐに帰り、三人での帰り道。何だかいつもとは違う気不味さを感じながら、緋菜は文人を問い詰めることでバランスを取っていた。陽の様子からして、悪くないんじゃないか。ランチの後にデートに誘うんだよ、なんて言いながら。でも本当は、昌平と目を合わせるのが恥ずかしいだけ。それをひた隠しにしながら、緋菜はもう明日のことを考えている。


 新しく始まった二〇二〇年。このまま四人は上手くいくのだろうか。ただ言えることは、人生は簡単に上手くいくものではない、と言うこと。


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