第三章
第三章 それぞれのある日
週末の出来事を思いながら、それぞれの一週間が始まった。先週と何も変わらない自分。けれど心のどこかに、ちょっとした変化を感じながら。
いつものように仕事をしながら、彼らとの週末を思い起こす陽。あんな風に過ごすのが楽しいことを、大分忘れてしまっていた。誰かと笑い合う時間も大切だと、改めて考えさせられた気がする。
彼らが陽も友人だ、と言ってくれたことは嬉しかった。それなのに、素直に受け止め切れなかったのは、後ろめたい秘密のせい。分かっていながらも、あの人に呼ばれる火曜日。
あっけらかんと、別れたことを職場で表明した緋菜。今まででは考えられなかったけれど、今は清々しい程である。昌平と猫カフェに行くのは、何時になるか分からないけれど、思ったよりも楽しみにしている自分がいる。
あの店でイカフライを食べていると、一人で飲み終えた成瀬と会った。それも何とも言えない、苛ついているような、見たことのない表情で。何だかそれが、気になる水曜日。
昌平は園児たちと遊びながらも、緋菜のことを考えていた。メッセージを送り合っては、今まで知らなかったことを少しずつ知った。実は同じバンドが好きだったりとか、地元が近かったとか。大したことのない、小さな共通点だ。
猫カフェに誘ってもらえたことが嬉しくて、今週は機嫌が良かったのに。今は、昨日の緋菜が少し胸に引っ掛かっている。あぁそう言えば、クッキーは美味かったろうか。今夜はそれを聞いてみよう。結局、そう一人でニヤニヤする、木曜日。
陽の言動が気になったままの文人。仕事に支障はないものの、何だかモヤモヤしていた。緋菜とはあの店で会ったけれど、上手く話を聞いてやれなかった気がしている。
今週は、何だかスッキリしない。彼女はただの友人なのに。ちょっとした煩わしさを感じ始めた、金曜日。
皆、何かを感じている。変わろうとして。何かを得ようとして。空回りして。苛々して。
さて、これからどうなるのか。今日もそれぞれの平凡な一日が始まる。
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