第35話 相対す

それは、奇跡的な確率であっただろう。


槍が弾頭と掠りあい、破壊されて行く。


その間にも、弾丸は降り注ぐ。


「…まだだ」


左腕は吹っ飛んだ。


右耳は聞こえないし、足の感触はない。


だが、立てる。


ヤツを、殺す。せめて、せめてでも。





「…来るか」


M2を消し、【闇縅】を展開する。


属性の暴走。


それは闇で無くても起こりうる。


いや、闇が起こりやすすぎる。


人体…いや、属性保持者の肉体への大規模な損傷によって、その部分を補うように闇が暴走する。


それが、闇。ただし1度起きたらもう起こらない。ただ、峰打ちである必要がある。


つまり俺はヘレティックが居る場所で暴走できたおかげで、安全に【闇】系であり勇士の【鎧】と組み合わさった【闇縅】を使えるのだ。


まぁ、自分より圧倒的に上の立場に居るものが自分を峰打ちしなければ、闇の暴走は続くか、殺されるしかない。


時間制限?そんなもんはない。餓死ならあるかもしれんが。


【槍】が何の属性かは分からないが、他は大体死にかけたらおきる、らしい。


【闇】の暴走はおたふく風邪みたいなもんだが、他は…何回か起きるんじゃないか?


結局よくわからん。このことを教えてくれたのだってヘレティックだし、彼女の属性も【闇】だし知る由もないだろう。





「谿コ縺谿コ縺谿コ縺谿コ縺谿コ縺谿コ縺!!!!!���� �أ٣�

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‎�����ݡ���ꭡ��!!!!!!」


「嘘だろッ!?」


聞き取れない言葉を発しながら、突っ込んでくる。


横に飛び、回避する。






よく、考えて欲しい。


【槍】が地雷で吹き飛ばされたのは、【器】から1キロ離れた地点だ。


それを、一瞬で距離を詰めた。




「化け物かよッ!!!」


蠢く黒い体には、蛭のような何かがあちらこちらにぶら下がっており、動く事にボトボトと落ちて行く。


「気色悪ッ…」


【槍】は、立ったまま動かない。


ジッ、とこちらを見続けている。


「、、、ヲ、ィ、ェ」


「あぁ!?」


「鐔縁讐鐔鰹輯鐔鐔э秀鐔�終」


「死ね」


…どちらも対話の余地がない。


「�!」


「死ねって言ってんだろ!」


手には柄付きの手榴弾を出し、キャップを取り外して紐を引き抜いてぶん投げる。


【槍】…いや、【槍】だった何かはまるでフリスビーを投げられた犬のようにそれに食いつく。


そして、爆発。


土煙が起きるが、視界は妨げられていない。


「…まだか」


飛び散った蛭が何体も蠢いている。もちろん、人の形をしていない。


そこにはただ、人骨があった。


蛭は次第に集合していき、再び人の形をとる。


そもそも、人ではない。


本人の属性を元に暴走するのが一般的な属性の暴走である。


しかし、これでは本人が属性に振り回されている。


こんなこと、通常の属性ではありえない。


「そういうパターンか…」


これは、【闇】のような通常な属性の暴走ではない。


つまり。




【槍】の、暴走。

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