第32話 義理

その後は剣折れと俺は目隠しをさせられ、何やら坑道のような所を通っていた。


…本音をいうと、最初はあの2人の声の判別の仕方が分からなかった。


判別の仕方は、一人称のみだ。


「僕」なのが脇腹姫、「私」が我らがお姫様。


脇腹姫が女か男かなんか知らんけどもね。


まぁ、男であんな言葉遣いは少々気味が悪い。


そんなこんなで思案していると、目隠しが外され、目の前には普段とは違う光景が広がっていた。


「ここが、北の王国の誇る大山脈の山麓である都市…はずだったんだけどね」


「既に突破されていたか」


既に市街地は所々燃え始め、


「クソっ…ここで仕掛けるしかあるまい」


「無理だ、人数に差がありすぎる」


「それは私もそう思うわ…それに、彼の能力は発揮されない」


「ここを見捨てるのか!?」


「負けたのに、か? それにまともに戦闘出来る者は何人居る? 市街地戦なぞ数がものを言うんだぞ?」


「このままだと平野だぞ!? それこそ数が勝敗を決めるだろう!」


「いいや?」


「何を根拠に言っているのだ!」


「お前の剣を折ったものはなんだろうなぁ」


「あんなもの至近距離だから通じたものだろう!」


「そうだ、"あれ"は至近距離だから通じたものだな」


「何が言いたい!?」


「自分で考えろ。剣だけじゃなく頭までやられたのか?」


そう言い合う2人の少し後ろで、姫(?)と姫が話し合っていた。


「君のところの騎士は随分と…」


「あれは私の騎士じゃないわよ…ただ私を護衛してるだけ」


「そういえば彼は黒騎士だったか」


「えぇ…【闇】のね」


「文字通りの黒騎士、か」


「そう…つまり」


「君を守る義務は彼にはない、ということか」


言葉に詰まった彼女の言葉を代弁するように、それでいて突きつけた。


「義理しかないわ」


「それだけでも心強い…彼に代わりは利かない」

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