第31話 尋問
「…で、お前は誰なんだ?」
剣折れが、尋ねる。
「それはこっちの台詞でもあるがな」
乱雑に、向かい合わせのテーブルの上にM500を叩きつける。
「先に手を出したのはお前じゃないか」
「真夜中に他人の部屋に入ろうとしてくるやつが何を言う」
「…この黒騎士風情が」
「主君も守れず剣も折れた、そんな騎士が誰を馬鹿に出来るのかね」
「チッ」
「言葉遊びに負けたら悪態か。いいねぇ騎士様とやらは」
「…やる気か?」
「おおっと脅迫かい?残念、このリーチなら君が折れた剣も短剣も鞘から抜いて突き刺す前に君の顔は吹き飛んでるさ」
「随分と仲が良くなったようだね」
突然、横から声を掛けられる。
「あぁ、脇腹姫」
「脇腹…」
「貴様、このお方を馬鹿にするか!」
「馬鹿にされるようなことをしただろう?
人の部屋に勝手に入ろうとして返り討ちにされた、これが美談になるとでも?」
「許さん!殺してやる!」
「止めろ」
「ッ!?」
「これは主君としての命だ。即座に戦闘態勢を解け」
「ですが、コイツは…!」
「お前もだぞ、勇士」
どうやら、自分もお姫様に怒られるようだ
いつもとは違う、仮にも主君の血を継ぐと分かる言葉遣い。
「はいはい、わかりやしたよ」
「…耳を貸せ」
銃をホルスターに戻し、ソファーから立ち近づく。
「勇士、大変な事になった」
「どうした」
「西の帝国に【槍の勇士】が召喚された…現在、北の王国に侵攻中とのこと」
「防衛線はどこまで後退した?」
前にお姫様に聞いた話だと、既に領土的野心を持った大国は無く、また大規模な戦闘も起きていないとのことだった。
それ故に、要塞や砦なんかは何百年前のものだし、補修はされどもろくに機能はしない。
「毎回起きるお飯事用の要塞なんぞは全て陥落した」
「ま、妥当だな」
「そして、西から北への障壁、山脈も遅滞戦術でなんとかしているが突破されることは明白だ…
その後は穀物地帯だ…正面衝突したとして、戦力も士気も劣る王国軍は敗戦必須だが、その先は都市が多くある…」
「開戦までに間に合うか?」
「勿論。その手筈はあちら方が整えてある」
「ならよし。戦闘の準備だ」
「…各国の重要都市には転移装置というものがあってね」
「それを使って、北の王国の最前線近くの都市まで飛ぼうって感じね」
「私は反対だ!コイツにそんなものを使わせるなど…」
「なら指を咥えて祖国が滅びるのを待つんだな」
「…戦も知らんくせに」
「貴様らこそ知らんだろう。お前こそ戦をした事があるのか? それにこんな馬鹿みたいな遅れた戦なぞ何十年前に無くなってる」
「違う世界のものを出してどうするんだ?」
「この世界より進んでるからな。装備なんぞは何百年進んでるか分からん」
「そんなもの槍に通用するかね」
「音速を超えるものに反応出来るなら近接戦闘での勝利など不可能だろうに」
「おしゃべりはそこまでよ…この港町にも、一つだけ用意されてる装置がある。それを使うわよ」
「こんな町にも用意されてるんだな」
「…亡命ルートの1つだからね」
「そういうものか」
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