第20話 いわゆる「ギルド」

念の為ガスマスクを付けておく。


やはり、目まで覆うタイプじゃなくて良かった。


あとは息を吸う時に空気を送るファンやモーターも着いていて、呼吸も苦しくない。


あと、耐久性も高い。そりゃ抜群に。


その時、コンコンと扉が叩かれる。


さすがにガスマスクを付けてる姿は色々とやばいので、咄嗟に外しておく。


「失礼します」


入ってきたのは、多分昼飯を乗せたワゴンとメイド。


「こちらに置いておきます。あと、1時間後にオルテア様がおいでになられます。着替えた方が宜しいかと」


そう言われて、初めて今自分が着ている服を確認する。


完全なパジャマだ。これじゃあさすがにお姫様には会えないだろう。


「ありがとう、色々と気を使ってもらって」


「それが仕事ですから。では、失礼しました」


パタン、と扉が閉められる音が虚しく部屋に響く。


さてさて。飯はどんなものなのだろう。


見てみると白くて柔らかそうなパンに牛肉を煮込んでほろほろになったスープ、そしてオレンジや色とりどりの野菜のサラダ。


…美味い。中々のものだ。


あんな飯を作っていた俺だが、物の美味さは分かる…つもりだ。つもり。


食べ終わった後は…とりあえず食器を纏めておいて、【器】で服を着ておこう。


中には黒いインナーのように通常装甲だけ装着しておこう。


あとは、ガスマスクも外そう。


そして、お姫様が部屋に入ってくる。


「お姫様、ご要件は?」


「あなたにこれを渡しに来たのよ」


そう言って渡されたのは、黄緑色の板。


ただ触り心地は金属のようだ。例えるならドッグタグが正解だろう。


「これは?」


「これはあなたの身分証明書のようなものよ。あなたの何か…まぁ大抵は魔力だったり、血だったりするんだけどね。それを注いだりするとあなたの身分を証明できるように出自が書かれるわ」


「ふむ…なかなか便利なものだな」


「えぇ。一応住所はリンデン信仰国の首都にしておいたわ」


「おお。ありがとう」


「礼には及ばないわ。あの暗殺者から私を守ってくれたしね。


…あぁ、あとそれは国際同業者組合管理委員機関…あなた達に分かりやすいように言えばギルド、と言えばいいかしら


そのギルドが管理してるさっき渡したそれ、まぁギルドカードっていうんだけど…それにはあなた達でいうクレジットカード、でしたっけ。まぁそういう使い方も可能なのよ!」


ほーん、そりゃ便利だ。だけど血か…いや、【闇縅】で後で覆ってみよう。


「あとは…そうそう、明後日には馬車で王都からは出るわ」


「了解した」


…出発するのは意外に早かったな。

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