第19話 複合装甲

「あぁ、やっと起きたのですね」


部屋に入ってきたのは例のお姫様だ。


「あぁ。…すまなかったな。騎士も、守ることが出来なかった」


「あぁ、あの騎士は私の騎士じゃないわ」


「そうなのか?」


「えぇ。大体兄上か姉上が寄越したのでしょう。不振な動きをした瞬間に、すぐに殺せる様に」


「保険、か」


「ですからあなたが気に病むことはありませんよ」


「ならありがたい…」


「では、あと…2時間後にお昼ご飯が配られると思います。それまで、自由にしていてください。くれぐれも、部屋から出ないように」


「あぁ、わかった」


そう言い終わったら彼女は扉を閉めていった。


あぁ、そうだ。


メルキオール。


《なんでしょうか》


【器】で出せる最大容量はどれくらいだ?


《現在【器】はレベルマックスの為、最大容量は2.5tから5tに増加しています。


また、【鎧】のように融合させ上限突破可能な高等属性に変化させた場合、数十倍まで増加すると予想されます》


ふむ…あれだな。陸自の軽装甲機動車を召喚してお釣りが来るぐらいだ。


…まぁそんなのを出したら目立つな。辞めとこう。


とりま、【闇縅】の練習でもしておこう。


…あの時の、「影」を腕にまとわりつかせた時のように。


ズルズルと、這うように柔らかい何かが腕を覆う。


だが、あの時ナイフを弾けたのだから固くすることも出来るはずだ。


そうだな、例えると戦車の装甲だろうか。鋼ならば、炭素の多寡によって、硬さと脆さが変わる。


それと同じようなことだろう。


《可能です。今顕現させている通常装甲の他に硬化装甲と軟化装甲の2種類が存在し、硬化は物理攻撃に、軟化は魔法攻撃により耐性を持ちます。他に、通常装甲は自己治癒能力を高めます》


ふむ…なら複合装甲にした方がいいな。


外殻の硬化装甲、外皮に軟化装甲、内皮に通常装甲。


これで良いだろう。


あとは…寝具台には、ランプの横に俺の付けてたガスマスクが置いてあった。


なんでこれがあるんだ?


《かの黒龍ヘレティックが【器】の勇士、つまりあなたに干渉する時に触媒として使用した時に【器】で生み出したものから概念や形質、効果が変わった為独立したと思われます。


触媒として使用されたのは【闇】自体が【混沌】の上澄みなのと同じく、空気の中から清浄な物のみを通過させるからでは無いでしょうか》


ふむ…形質以外にも概念とか効果が変わることで独立するんだな。


《はい。効果については装着時の【闇縅】の威力、顕現速度上昇と呼吸系への攻撃が全て無効化します》


つまり毒ガスなんかが無効化されるのか…強すぎないか?


《いえ、仮にも【闇】系列の属性を持つ者の中で最上位に位置するヘレティックの力を通したものですから当然かと》


…その最上位の奴らの戦いはどんなものなのだろう…全ての攻撃を無効し尽くされてそうだが…


《力押しの可能性が高いです》


えっ結局ゴリ押しなのか…まぁそんなもんか。かの有名なハリーポッターだって戦術もへったくれも無いもんな。


結局杖と才能でのゴリ押しだし。

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