第10話 我こそは

『少年よ、聞け。


…【器】は、君が思っている以上の物だ。


だが、1人でなんでも出来ると自惚れるな。


協力しろ。【器】を明かせ。武器を渡せ、情報を共有し、力を合わせろ。


いいか、【器】は万能じゃない。


自分の空想すらも再現できる物だが、それは限度がある。


【器】を極めろ。決して、死なぬ様に。決して、目立たぬ様に。


…【器】はお前の心だ。


理性を無くすなよ。その時、【器】はお前を背く。


非情でも、冷酷でもいい。理性を無くすな。


…時間か。いいか、生き残れ。その為には何だってしろ。心を保て。


貴君に勇士の誉あれ!』







…目が覚める。


そこは、最初と同じ、真白の空間だった。



『…起きたか。これで貴様ともおさらばだな』



いつもは偉そうな声も、いくらかの感情が込められていた。



『では、貴様を転生させる!


お前の体にはいくらかのプレゼントも送っておいた。


いいか、【器】は他の勇士と比べて地味だし、地力がない。全ては、お前の頭次第だ。


それを努努忘れるなよ。


生き残って見せろ』



そう、早速告げられ体が白に包まれる。









長い、長い時を経たような気がする。


目を開ける。


1人の、豪華なドレスに身を包んだ女性と、数人の鎧を着た者達。


さしずめ、お姫様とその騎士たち、か。


地球ではない異世界なのだから、当たり前かもしれない。


目の前では女性が喜んだ様子で1人の騎士と騒いでいる。


耳はまだあまり聞こえない。


女性がこちらに向かい、問う。


「あなたが、『勇士』なの?」


そうだ、俺こそは。


言ってやろうじゃないか。


「我こそは、【器】の勇士だ」

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