第6話 手合わせ

手合わせの条件は1つ。


「事前の武力行使の禁止」。ただそれだけ。


相手は魔術…実際何をしてくるか分からない相手だ。


魔法は神が使い、魔術は人間が使う。


それは科学をねじまげるか、科学に沿わせるかの違い。


まぁそんなことわからん。つまり神の起こす「奇跡」とやらの劣化版。


そして科学ならば兵器に勝るはずもない。


まぁそんな机上の空論はいい。


あと他の試合は見れないようだ。あくまで「手合わせ」だかららしい。


やってやる。


…生き残る為には、どんな事だってやってやる。


例えそれが、人を殺すことでも。






「よろしくね」


相手は…黒髪の女だな。


「あぁ、よろしく」


何も無い円形の白い空間。


ここで手合わせだろう。


やつは…祭壇をいじってるのか?


だが、この場所は既に俺のワールドだ。


何も無い時点で、だ。




『では、手合わせを始める!!』




なにも【器】は手にだけ物を召喚できる訳じゃない。手を床につける。そして床をガン見!


能力!「共感覚」!!!


相手の足元に地雷を【器】で顕現させる!


だが祭壇は青白い光を放ち初めー


「危ない危ない…君、意外と強いね…」


なんで生きてるんだよ…!?


地雷を踏んだのに生きている。絶対にあの祭壇が原因だ。


だが…「共感覚」はもう使えそうにない。


何故かって…?


「はッ!」


トン、と足を床から離しこちらに飛び込んでくる。


しかも、ナイフを持って。


手の中でスローイングナイフを出現させ、投げ付ける。


相手は避けれる軌道を取りー


「もらった!」


スローイングナイフを投げ、前に伸びきった右手ではなく、残りの左手に逆手でナイフを出す。


そして斬り合う、が。


「くッ…!」


剣が、へにゃりと溶ける。


そうだ、友達から聞いた話だと…高位の魔術だと、あの聖剣「エクスカリバー」並の剣を普通に使うらしい。


つまり、地雷の爆発を防いだあの祭壇を作れること自体…つまり、その短剣も、相当なものだ。


しょうがない。相手のナイフを奪い取る肉弾戦をするしかない。


素手で突っ込む。


相手のナイフは相当な業物だ。


だが、使う者が未熟だ!


ナイフを突き出してくる!!


その腕だ!その腕をもらう!


肘を狙え!!


そのまま有り得ない方向へ、捻じ曲げる!!



ーゴキッ、と嫌な音が聞こえる。



ナイフが、手から離れる。


そのままナイフの柄を蹴り、遠い所へと飛ばす。


「ぐっ…あがっ…」


呻き声を上げながら祭壇の方へと戻っていく。


祭壇は若干光がくすみながらも、その手を直す。


「成程。その祭壇を壊せばいいんだな!っと!」


敵もそれを察していたようで、左手で器用にナイフを投げてくる。


そんな言葉に引っかかるようじゃまだまだ1人前だ!


俺が求めていたのは、これを出す時間だ!


『コーラカル・アヂーン-1』


ガスマスクを装着し、ピンを抜いて適当にぶん投げる。


煙の中では、咳き込む声。そしてその後に…呼吸が出来ないことによる重度の喘息。


もらった。


祭壇の青い光も無くなる。まぁ、残機が無くなったっつーことだな。


トドメにフラグを投げ、爆発させる。


飛び散った血が、ガスマスクにかかる。


勝った。






・「コーラカル・アヂーン-1」

…別名「KOLOKOL-1」。ロシア軍の保持する無力化ガス。ただその非致死性は大変疑わしい。実用例は2002年の「モスクワ劇場占拠事件」。当件においてこのガスによって人質の多くが中毒死した。


・「共感覚」

…視覚と触覚を共感覚させ、集中して見ている場所をまるで触っているかの様に感じれる東雲悠斗の元々の特技。そこから、【器】の能力を適用させた。これによって【器】は実際に触れていなくても触覚として認識していればよくなった。

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