第2話 【器】
『勇士』
その言葉は、今も俺の胸の中で響いていた。
まだ白い空間に閉じ込められたままだが、少しだけ何かが進んだ気がする。
(ふー…ようやく全員への説明が終わったとこじゃ。そうじゃな、これより、貴様ら全員は一度顔合わせをしてもらおうかの)
貴様「ら」や顔合わせという不穏な言葉ー
だが、彼の心を満たしていたのは『好奇心』
(じゃあ、最初で最後の平和な瞬間じゃ。存分に楽しめよ)
…
…
…
…
…
パチッ。
微睡みから逃げる様に目を開け、周囲を伺う。
周りには同じようなベッドから起き始めた七人の人間。
ベッドは4つずつ向かい合わせに置かれている。
肌の色から髪の色、目の色や体格まで違う計八人の人間。
「おい、黒髪」
横に居る柄の悪そうな茶髪黄色目の外国人の男が話しかけてくる。
しかも、明らかに挑発するような、侮蔑するような意味を含ませて、だ。
どうして、言語が通じているんだろう。
そんなことも考えながら、無視する。
俺は横の赤毛に話しかけることにした。
「なぁ、アンタは?」
「っ!?」
まさか自分に話しかけられるとは思っていなかったようで、驚愕と少し…ほんの少しの怯えが混ざった声をあげた。
「あぁ、俺は日本人の東雲悠斗って言うんだ」
「わ、私は…アリス」
『ほう、顔合わせはだいたいすんだようじゃな
次は、能力を選んでもらおうかの
あるのは、剣、弓、槌、斧、槍、魔術、魔法、鎧、【器】』
最後の言葉に、何故か俺の心は舞い上がる。
子供の頃から久しく忘れていたその感情を、俺は抑える術をしらなかった。
目を輝かせ、息は荒くなる。
『貴様らは欲しい能力を心に願え。さすれば授けてやろう』
そう聞くと、俺は一心不乱に【器】を願った。
『そう慌てるでない。そうか、貴様は器を願うか…目が高いな。
器の能力は『願った武器に変化する』という点じゃ。威力も習熟度も他の能力には劣るが、その戦闘形態の多様さは何者にも勝る。
多くの武器によって敵を翻弄しろ。
短剣で暗殺し、杖で魔を顕現させ、大砲で薙ぎ払い、刀で両断せよ。
貴様には特別に【鎧】も授けよう。
【器】とは劣るがこちらも形を変化させられる。【鎧】という概念は越えられないが…。
上手く使えよ、少年。
これからは一人一つの空間を与える。
空腹も睡眠も感じないだろう。
そこで鍛錬せよ。
20年後、貴様らは召喚される。
戦え。敵を殺す為にはどのような手段でもいい。
幸運を。貴方の征く道に。』
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