器の勇士

たまごやき

第1話 勇士

 カランッ、と飲み干した缶をアスファルトで舗装された道路に捨てる。


 「ふぅ…」


 足裏は疲れを訴え、その場から動こうとしない。


 しょうがない、とでも言うように近くのベンチに座る。


 微睡みを感じ始めたが、何かおかしいと、体が訴える。


 またどこか体がおかしくなったのかと、陰鬱とした気持ちで眠りにつこうとするも、やはり、何かが気になる。


 例えるならば、体の中身だけが浮くようなー


 …そう、浮遊感。


 頭の中でそれをピッタリと言い表す語彙を見つけて、少量の満足感を得る。


 それと同時に、浮遊感への興味も湧くがー


 睡魔には、勝てなかったようだ。









 (起きろ)


 (起きろ!)


 (起きろっ!!!!)


 はっ、として目を開けるとー


 全てが白い空間。


 まるで、死後の世界みたいだと呟く。


 しかし、ここが天国か地獄か、それとも審判の場所なのかは分からないが、あの宗教家達の言うことは嘘なのだろう。


 言葉通り何もないのだ。


 これならまだ五億年ボタンを信じるヤツのほうが信頼できる気がする。


 そんなことを他愛もなく考えているとー


 (あぁ、ようやく起きたか寝坊助めが…


まぁ、よい。多少品切れはあるが…)


 品切れ?、とこの場では聞くはずもないであろう言葉に対してオウム返しをしてしまう。


 (言い忘れておったな。そうだな…貴様には運命を変えてもらおうかの)


 運命、か


 (どうした?怖気付いたか?)


 フッ、と笑い飛ばし、俺は言う。


 「運命ってのは元々決まってるものだろ?」


 たとえば過去に飛ばされようが、俺は同じ道筋を通る筈だ。


 何故なら、過去に存在する俺は過去に飛んだ俺による干渉を知らず知らずの内に受けている。


 そうして過去にいる俺は未来…まぁ、前の俺が過去に飛ぶ時点と同時に過去に飛び干渉する。


 まぁ、無限ループしか起きないってこった。


 よく『未来を変える』だの『運命を変える』だの言ってるがそれはそいつの『予想』だ。予想なんぞコロコロ変わる。


 (ふむ、その考えについては議論を交わしたいところだが…


 生憎、時間がない。では、言い方を変えよう。少年よ、貴様は運命を変えることを望むか?)


 「勿論。」


 にやりと笑いながら、承諾する。


 (ふふっ…では、今から貴様を勇士として認定する!)

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