第47話
ベネディクトの頭の中を人間の女の言葉が反芻していた。
彼女は言った。意味がないと……大切な者を失ったら世界に平和が訪れても何の意味もないと。
彼女は躊躇うことなくその答えに至った。
世界と大切な者を秤にかけて、迷わずに世界を切り捨てた。全てを敵に回すこともいとわなかった。
ベネディクトの愛する娘たちは言った。人間と魔族は変わらない。それは真実であった。
彼女はそれを証明してくれた。
しかし……ベネディクトもまた同じ問の前に立っていた。
世界と娘。それを秤に乗せて答えを迫られている。
彼女は言った。意味がないと……
それこそが答えだった。
魔族の平和。この世界を守るためには戦わなければならない。
戦うべき相手は憎き敵ではない。愛する娘とその仲間たちだ。
だがそうしなければ世界が終わる。
ベネディクトは魔王だった。だが……それ以前から魔族の指導者だった。
魔族の平和を第一に考えなければならない立場にあった。
しかし……彼女の言うように意味がない。そこに娘たちの笑顔がないのならベネディクトには何の価値もない。
それは愚かな選択であることはベネディクトも理解している。だが……きっと愛する娘の前では父親とは愚かなものなのだ。
だから……仕方がない。
「私の負けだ」
そう言ってベネディクトは笑顔を浮かべた。そして言葉を続ける。
「私が知り得る全てを話そう。私は神に力だけではなく知識を与えられた。それはこの二百年に一度繰り返される戦いの真実。神の真意……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます