第36話


「いったいそれはどういうことなの?」

 クロエが顔をしかめ言う。

 正直ルル自身にもそれはわからなかった。

 今日、ルルたちは五人で市に出かけた。

 そこでレナトという町を魔族が襲ったという情報を人づてに聞いた。

 マクシムがその情報を聞いた後、五人で他の町から来ている商人などに聞いて回った結果、それは真実で間違いなさそうだった。

「レナトは結構大きな町で、優秀な騎士団も有している。聖剣だっていくつかはあるはず。数人の魔族が適当に襲って滅ぼされるなんてことはない。壊滅したってことは五年前のような大規模な攻撃だったはず。魔族はしばらく攻撃してこないはずなんじゃなかったの?」

 エリナが問う。

「私は魔王として、魔王補佐である父に魔族からは攻撃は仕掛けないように頼んでおきました」

「ルルがなかなか戻ってこないから、探索部隊を派遣するとかは考えられるけど、魔王抜きで戦争を始めるなんて考えられないわ。少なくても私たちの父はそんなことはしないと思う。だから申し訳ないけど、攻撃が本当なら今、魔族側で何が起きているかは私たちにもわからない」

 レーネの言う通りだった。ルルの知っている父のベネディクトは戦闘には消極的な判断を下すことが多い。だからルルが魔王として書置きを残してきた以上、ベネディクトの意思で攻撃を仕掛けることは考えられない。

「それにその魔族たちは勇者に倒されたって……」

 マクシムがつぶやく。

「僕は何もしてない……」

 それにジアが答えた。

「一体何が起きているの……?」

 クロエがうめく。

「ジア以外の新しい勇者が現れたっていう可能性はないのか? もしそうなら魔族の方でも、もう一人魔王が現れたってことも考えられる。そんでそいつが攻撃を命令したとか」

 アルベルトのその言葉に一同は静まり返った。

「どうすればいいと思う?」

 エリナが言う。

「とりあえず、レナトに向かってみましょう。町の状況を見ればそれが魔法によるものかくらいはわかるわ。それにもしかしたらその新しい勇者の居場所もわかるかもしれない」

 クロエの言葉に一同は頷いた。


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