第18話
「で、結局どうなったの?」
レーネがジアに問う。
「しばらくはここにとどまるみたいです。魔族側がこの五年間は大きな攻撃を仕掛けてきてないので、とりあえずは様子を見って感じで。それに僕は勇者になったばっかりだし、片腕も最近なくなったばっかりだから、チームワーク向上を兼ねて、しばらく戦闘訓練をするみたいです」
「そうなんだ。それは好都合ね」
そこまで言って、レーネは首だけを動かしてドアの方に視線を向ける。
「で……ルルはどうして急に料理を?」
ルルとジアの二人は夕方に帰ってきた。
今日も不機嫌そうにして帰ってきたルルは帰宅の挨拶より先に、料理の仕方を教えて欲しいと言い出したのだ。
それで今、バティに教えてもらっている。
始めはレーネも参加していたが、レーネも料理経験はなく、やる気もないので追い出されてしまった。
「僕もよくわからないんだけど……料理が作れないのが悔しかったんじゃないかと」
「そう……あの子は負けず嫌いだからね」
そう言って、レーネは壁の向こうの声に耳を傾ける。
ルルとバティは魔族の言葉で会話している。バティはまだ人間の言葉を覚えられていないのでそれは仕方がない。
レーネとルルの姉妹とバティとの関係は長い。バティはずっと二人の父親であるベネディクトの部下だった。だから子供のころから面識がある。
それでもルルはバティに敬語で話す。バティだけではない。ルルは年上、年下にかかわらず敬語を使う。例外は家族だけ……
そんなルルがジアには敬語を使っていない。
それがレーネには不思議だった。
「昨日言ってた……幼なじみのレミちゃんだっけ? もしかしたら今日その子が料理とかしなった?」
「何でわかったんですか? お昼と夕食はレミの作ったカレーを食べたんですよ」
「あーー。やっぱり、そうなんだ……」
レーネはため息をつく。
「どうしたもんかな……」
そうつぶやいて、レーネはもう一度大きくため息をついた。
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