第11話


 一人だった。

 一人になったわけではない。始めから一人だった。

 思う……いつだったのだろうか。自分という存在に気付いたのは。自分の中に自分というモノが在ると気付いたのは。

 それに気付く以前は全てだった。

 しかし、気付いてしまった。ある日、突然に……何の前触れすらなく。

 水面に零れ落ちた一滴の涙のように、静かにゆっくりと自分の中に自分が広がっていった。

 自分を知覚した。

 だから自分が自分だけの世界の中にたった一人であることを知ってしまった。

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