第二話 デアイノヒ

「イト?」

優しい瞳が私を見つめている。


「う…朱藍…」

私は言葉を濁らせた。なんとも言えない空気だ。


「まさか朱藍が帰国してただなんて…」

「驚いた?」


朱藍は4年ぶりの笑みを私に見せた。

朱藍の笑顔を見ると、なんだか安心するの。


好きだった、とかじゃなくて

安心させてくれる〘カレシ〙だった。


「そーいえば、集会…あるんだって」

「へー…集会ってなに?」


え?!


…あ、そっか。朱藍は帰国子女なんだっけ。


「全校生徒が体育館に集まって、

 校長先生のなが〜い話を聞くことだよ」


ホントに腰が痛くなるんだよね〜、と後付した。


「シュー…カイ…」


そうぼやく朱藍だったが、やっぱよく見ると…

「美形…(笑)」


「え、僕のこと?」

目を丸くして驚く朱藍だったが、ふふ…と笑い出した。


「イトは前よりもカワイくなったよね、断然綺麗…」

と、私の髪にそっとキスした。


「朱藍は…背ぇ伸びたし、ちょっと大人びてる」


「ってことは、僕もイトも成長したってコトだよね」

コク、と私は頷いた。


「イトのことだし、カレシとかいるの?」

「今はいない…もん」


「へ〜、カワイイのになんでだろ?」

「今は、見た目より性格なの!」


ムッとなってそう言う。


「僕もフリーだからさ、気が向いたら彼氏候補にしてよ」


「気が…向いたらね!言っとくけど私、

 気とか向かないタイプだから!」


「知ってるよ(笑)」


はにかみながらそう言う。


ガラ…

「おぅ居鳥羽、遅いぞ〜」

部活のクソ顧問が呆れて言う。


「…つっても、まだ始まってないんでセーフですよね」

流石に余計な一言だったが、顧問は作り笑顔で誤魔化した。


相変わらずキモーとか、凪咲と話してると

校長先生の登場だ。


「えー…それではね、集会を始めますね」


生徒会メンバーが前に集まる。


「では、集会を始めます。全体、起立!」

ガバッ、と皆が立ち上がるが、ダルそうだ。


そして校長先生の話の半ばに至った頃、

私は釘付けになった。ある人に。


「何、あのイケてるオトコ…」

小声ながらも、私は絶叫した。



少し焼けた肌色に、優しそうな眉。


目は大きくも小さくもない、いい感じで。


口元の髭はチャームポイントとなっている。


真新しいスーツに身を包んで…


赤いネクタイをピシッと締めている。


30代後半から40代前半くらいだろうか…




ー…かっこいい。そう感じてしまう…


「ほんとタイプ。ヤバ」

胸が高鳴って、止まない。


この一目惚れが未来にどうなるのかは

まだわからない。


けど、きっと私は


―…この人に恋をするんだろう。

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