警笛の音が聞こえる。


「姫ちゃんの描いた漫画って面白いね」


「ありがとう」


同じクラスに幼い頃から仲の良かった子がいた。名前は友美。高校に入ってからは遊ぶグループが別々になったが。


少しぽっちゃりで笑顔の可愛い子だった。


よく私は友美に私の書いた漫画を見せていた。少年誌や少女漫画のキャラクターを真似して描いたものや、オリジナルキャラクターを描いたものなど。主に4コマ漫画が多かったが。


私は気恥ずかしくてその漫画を友美にだけしか見せなかった。


ある日私は友美が休み時間にずっと一人で誰とも話さず椅子に座ってるのを見た。なんだか辛そうだった。


次の日も、その次の日も友美は一人で誰とも話さず座っていた。


私は友美が仲間はずれになっていることに気づいた。


「ともちゃん? どうしたの?」


私はある日の休憩時間話しかけた。


すると教室に片隅で集まっていた女子グループから笑いが起きた。友美と仲が良かったグループだ。なんだか嘲るような笑いだった。


私はチラリとそれを見た。


「ともちゃん……」私は話しかけると


友美は潤んだ瞳で私を見た。


「私栄子ちゃんから嫌われちゃって……」誰もいなくなった放課後私達は話していた。


「急に無視されるようになっちゃって」


「なにか心当たりある?」私は聞いた。


「分からない」泣きじゃくりながら友美は答えた。


「先生に相談した方が……」


「うん。姫ちゃんに一緒に来てくれる?」


私達は先生に相談することにした。


「先生友美が無視されてイジメられているみたいで」私は言った。


「えっ? 本当なの? それは」

教師は焦ったように答えた。


友美は下を俯いて黙っていた。


「誰から?」教師は聞いた。


「栄子ちゃんです……いきなり無視されて」

友美は答えた。


「友美ちゃんはどうしたい?」教師は友美に聞いた。


「仲直りしたいです……」友美は答えた。


私達はイジメの事実を教師に伝えた。


「先生に話したから大丈夫だよきっと」


「ありがとう姫ちゃん」


次の日私は友美が元の女子グループと仲良さそうに話しているのを見た。

「良かった、仲直りしたんだ」私はそう呟いて安心した。


ある日私は友美と栄子のグループがある一枚の紙を見て全員で笑っているのを見た。


なぜ笑ってるんだろう。その時はそう思った。


そこから数日たったある日、私は廊下で一枚の紙が落ちているのを見た。散々踏まれたような靴あとのついた薄汚れた一枚の紙だった。


それは私の描いた漫画のコピーだった。


友美にしか渡していない漫画の。


私はそれを拾い上げると教室からどっと弾けるように笑いが起きた。笑っていたのは栄子のグループでみんな一緒になって笑っていた。


その笑っている中には友美もいた。


「詩織いつまで学校休んでるの。いい加減行きなさい!」


私は学校に行けなくなった。


私は部屋に一人で閉じこもることが多くなった。親は怒った。


「みんな学校行ってるじゃない! なんであなたはそうなの?!」


私は何も答えなかった。


警笛の音がどんどん大きくなる。



「あれっ」


私は暗闇の中目覚めた。空には満天の星、虫の音が鳴っていた。初めての野宿ってことになったがちょっとは眠れたみたいだ。


私はグリフィンと食事をとったあとしばらく雑談した。そろそろ眠たくなった私はグリフィンに「あなた達いつもどこで寝てるの?」と聞いた。


グリフィンは「ここだよ」と地面を指差した。えっ……マジかと思ったが彼らはいつも野宿しながら生活してるようだった。


辺りは暗くなってきており、私は森の中どうすることも出来ずに彼らと一緒に野宿することになった。


初めての野宿だったが地面には草が生えており、寒くもなく暖かくもない季節だったので私は焚き火のそばで横になったが、やはり眠れない。


しばらく寝返りをうっているとダイアウルフのガロウがそばに来てくれて添い寝してくれることになった。ガロウとの添い寝はなんとなく安心して私は少し眠ることが出来た。


少し距離があるところにグリフィンが寝ていた。


空を見上げる見たこともない星座ばかりだった。「やっぱり異世界に来たんだ……」と言いながら私はまどろんだ。


「お前これからどうすんだ」


朝起きるとグリフィンが聞いてきた。


「ここにいると危ないよ」とガロウが続けて言った。


「ここにいると人間なんてただのエサだかな……まぁ俺は食ったことないけど。オーガだけじゃなくてゴブリンやオークなんかもいるからここにいたら守りきれるもんじゃない」


私は言った。


「私は急にこの世界に飛ばされたから……なにがなんだか……」


「まぁ俺と同じエルフでも人間を良く思わない奴らもいるからな。そいつらに狩られるかも知れないし」


なんだかゾッとした。

まぁ彼らにとっては他種族がいきなり迷い込んで来たんだ。そりゃいい気はしないだろ。サバンナになにも持たない人間が迷い込んだみたいなものか。


「どうしよう……」私はうなだれて頭を下げた。


「人間界に行った方が良いんじゃない?」とガロウが言ってきた。


「人間界なら君みたいな人たちいっぱいいるよ!」続けて言う。


「と、言われても人間界がどこにあるか分からないし……」

私が頭を抱えていると


「あーーもうしゃーねーなぁ! 連れてってやるよ!」とグリフィンがイライラしたように言った。


「ゴブリンの巣とかもあるからな、人間界までな、後は自由にしたらいい」


「うん、ありがとう」

私は微笑んで言った。


とは言っても人間界に連れていって貰ってもなと思っていた。突然この世界に連れてこられてなにをしたら良いのか分かってなかった。


「ちょっとその前に……」

グリフィンは立ち上がってお尻をはたきながら言った。「根住みの長老に挨拶していくか、最近顔合わせてないからな、人間が来たら連れてくるように言われてたからな」


「根住みの長老?」私が聞いた。

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