第13話 モズーク王
バタバタッ…。
ガヤガヤ、ワイワイ…。
ん…?なんだ?廊下が騒がしい。
もう朝か?
壁にかかっている時計を見上げると時刻はまだ4時前。
え…まだ朝早いじゃないか。
何かあったのか?
んーあぁもうっ!いい加減にしてくれよ!
こっちは眠いんだよ!
まだ普段だったら寝てる時間なんだよ!
なに?なんかあったの?
もう!なんでもいいけど、こう五月蝿くなってちゃたまんないよ!いい加減にしてくれないかな。
そう思ってた時…コンコン、コンコン。
俺の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「タラルス様っ!タラルス様!」
切羽詰まった声の小間使いが俺を呼んでいる。
これは只事じゃないぞと悟った俺は、はいっ!
といつもより大きな声で返事を返した。
「失礼致しますっ!たった今、モズーク王様がお帰りになられました!暫くしますと、モズーク王様がこちらへいらっしゃいます。タラルス様はモズーク王様にご挨拶をして下さいませ。尚、お洋服は早朝の為ご用意出来ませんでした。すみません。ですので、タスクラ王国から居らした時お着になられてた、お洋服をご用意致しました。こちらを着て下さいませ。」
「あっ…はい。ってことはなるべく急いだ方がいいですよね…?」
「はいっ!それはもう、とにかくっ!よろしくお願い致します。」
あぁ…なるほど。
だからこんなにバタバタしてたんだ。
まさか今日モズーク王が帰ってくるなんてね。
モズーク王は、俺がこの城に来て夕食会を開いたあと隣国のラントル帝国へ外交をしに出ていた。帰ってくる予定は半年後、長期の外交のはずだったんだ。
なのに今日帰ってきた。
そりゃぁバタバタするよなぁ。
しょうがない。
「タラルス様。ご支度出来ましたでしょうか?
モズーク王様がお待ちです。お急ぎくださいませ。」
「あっはい。今、行きます。」
走り回って、少し額に汗を滲ませた小間使いに連れられ、モズーク王の部屋へやってきた。
いかにも高そうな宝石がちりばめられた座椅子に座るモズーク王、その隣に静かに立つミカ様
…その場にモラックはいなかった。
夕食会の時はこの2人のそばにいたのに…。
どうしたんだろう。具合でも悪くしちゃったのかな?
「タラルス君、久しぶりだね。どうかね?モストン王国は楽しんでもらえているかね?」
「久しぶりでございます。モズーク様。えぇそれはもちろん、とても楽しく過ごさせてもらっています。」
「ははっ。そーかね。それは良かった。ははっそうかそうか。」
モズーク王は大笑いし、ミカ様も笑みを浮かべている。ここは俺も笑っといた方がいいだろうと思って、外用の笑顔を作る。
「ははっ。上手だねぇ。そんな風にしなくていいよ。だってねぇ?タラルス君。君、もう"秘密"知ってるんだろ…?」
えっ…はっ!?
えっ…秘密…?
秘密って…
「そんな顔して、分かってるくせにやるなぁ。
ん…?分からないのか?んじゃあこう言えばわかるだろ。"モラック"…ほら。目が泳いだ。やっぱ知ってしまったんだね。」
モラックのこと…?
ってことはアレか?
実は兄がいること、第1皇子じゃないこと…。
多分、これだよな…。
俺、知っちゃいけないこと知っちゃったのかな…。
「あ…はい。存じております。モラック様の事…。」
「だよなぁ。あーやっぱ、モラックはダメだな。あいつ、すぐ口滑らせる。もっと躾してやらないとダメかぁ。」
えっ…ちょっ…モズーク様?
口調違くない?
恐い恐い恐い恐い。
目が恐いよ?!
それに、躾ってなに?
絶対怖いことでしょ?
モラックにそんなことしないでよ!
モラックは、モラックは俺の大事な友達なんだよ!
「あぁそうだ。タラルス君、君タスクラ王国へお帰り。もうここへ用もないだろ。」
「えっ…?!あっ…」
「ん?文句でもあるのか?」
「いえ…ありません。」
「だよなぁ。ん!じゃあ今日帰ろうか!今から2時間で準備しろ?さもないと…わかるよな?」
「はい。了解致しました。」
モズーク王には逆らえない。
俺は今からここを去らないといけない。
たけど、モラックを置いて行きたくない。
置いていったらモラックは悲しい思いをするかもしれない、痛い思いもするかもしれない。
王子を連れ出すのはそれなりにリスキーだけどこの国は本当の第1皇子がいるらしいし、王のモラックに対する態度もあんなだから大丈夫だろう。
よしっ!モラックも連れ出そう。
今度はモラックに俺の国を紹介するんだ。
森へ行って、一緒に遊ぶんだ。
よしっ!やろう。
部屋に戻り、用意されていたカバンに服や、日用品を詰め込み急いで旅立ちの準備を終えた。
まだモズーク王に言われた時間まで1時間はある。早くモラックに会いに行こう。
2人の王 そよかぜ @skyoao
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