第5話 モラック様
はぁ…。
えーどうしよう。
どうしたらいいんだろう。
モラック様の影武者??
引き受けちゃったからやるけど…
やるしか無かったんだけど…
どーするのが正解なんだろう。
モラック様の真似をすればいいのか?
ってか俺とモラック様そんなに似てる?!
似てないよね?!
あーもうっどうするのが正解なんだよ!
俺はどうすればいいの?
1人で悩んでいたその時、小間使いが俺を呼びに来た。
「タラルス様、モラック様がお呼びです。広間の方へお越しくださいませ。」
めっちゃ丁度いい、俺もモラックに会いたいと思っていた。
広間…あぁ あそこだ。昨日この城に来た時シャンデリアが輝いていた所だ。
確か1階だったはず。
さて、モラック様をお待たせしないように早いとこ行きますか!
「タラルス様、こちらでございます。」
広間に着くと、背広の似合うダンディーな爺が案内してくれた。
広間の中央には食事会場にあったような大きな机、けどこの机は洋風でシャンデリアのあるこの部屋と合っていた。
その机の中央にある椅子に座っているモラック。
俺は今、ドアを背に立っているのでモラックと向き合っている。
「はじめまして…あ、じゃない。えっと…昨日ぶりだね…。え、えっと僕は、モ、モストン王国第1皇子のっモラックですっ。ど、どうぞよろしく、お、お願いしますっ」
へ…?え…。
モラック様?
は?えっ?俺と似てるとこほとんどないじゃん!
背丈は同じくらい?だけどあと全部違うじゃん!目も!鼻も!髪の色だって違う!
俺の髪は、栗色。モラック様の髪は、漆黒じゃん!
え…なにモズーク王って、目どーにかしちゃってんじゃないの?眼科行った方が良くない?
よく俺にモラック様の影武者が務まると思ったね…。
それにモラック様、何その喋り方…。
オドオドしてるよね?
なんで…"きんちょう"してる…の?
「モラック様!素晴らしい!!素晴らしい自己紹介でございますっ!爺は、爺は感服致しましたっ。あぁ素晴らしい」
「さぁさ、タラルス様もモラック様に挨拶をしてくださいな。そして二人の仲を深めようじゃございませんか!」
「あ…あぁえっと俺の名前は、タラルスです。
タスクラ王国の第1皇子やってます。この度は、ご招待頂きありがとうございます。これからよろしくお願いします。」
「うんっえっと…よろしくね。」
モラック様が恥ずかしそうに、モジモジと手を差し出してきた。
爺は後ろでうんうんと涙ぐみながらうなづいている。
これ、もしかしなくても握手ってことだよな…。
えーいや、モラック様のこと疑ってるわけじゃないけど握手はなぁ。
なんか、ちょっと怖いんだよぁ。
そんな友好関係持つつもりないのに…。
だけどこれ、握手しないとだよね…。
あーもうっいいや。
一応、うん一応だから。
俺の心は動いてません!
見せかけだけですぅ〜
俺はこの国の人間なんかに心許しません〜
昨日だってモズーク王に裏切られたばっかなんだから。
でもね、見せかけ大事だから握手は、しましょ。そーしましょ。
「よろしくお願いします。」
そう言って、モラック様の手を握り返した。
するとみるみるモラック様の顔は明るくなって、爺の鼻すすりの音も大きくなった。
この人…友達いたことないのかな?
握手しただけでこんな喜ぶなんて…。
「タラルスくんだよね…?えっとぼくね、キミと仲良しになりたいんだ!だからさ、えっとピクニックに行こう…?」
ピクニック…か。
正直めんどい…。
けどなぁ。
よしっ。
「いいですね。ピクニック。楽しそうじゃありせんか。天気もいいですし。行きましょうか。」
「ほんと!?やったぁ!ぼくと一緒に行ってくれるんだね!やったぁ。よかったぁ。
あ、ねぇ爺!見てた?聞いてた?ぼく誘えたよ!偉いでしょ?!」
「えぇ、えぇ。爺がこの目でしっかりと見させていただきました。ご立派でございましたね。完璧でございます。さすがモラック様!
さぁでは、お天気が変わらないうちにピクニックに出かけましょう。今、厨房係にお弁当を用意させますね。」
「うん!おねがいねぇ〜あっ!りんご入れるの忘れないでね!」
「承知致しました。」
そう言って爺は下がって行った。
えーうわぁ。
なんか言っちゃ悪いけどモラック様って子供だなぁ。
それとも社会経験がないのか?
どちらにしたって爺過保護すぎやしないか…?
と、まぁこんな調子で午後から城の敷地内にある公園までピクニックに行くことになった。
あーぁ。まさか今日行くことになるなんてなぁ。断ればよかったなぁ。
あー嫌だ。
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