第4話 モズーク王と会談

んーよく寝た〜。


部屋の正面にある大きな窓から朝日がキラキラと届いている。


もう朝か…。

ここでは鳥の声聞こえないんだなぁ。

あれ、目覚まし替わりに聞いていたのになぁ。

やっぱ都会だからか?

いつも聞いてた声が無いとちょっと寂しい。

さて、着替えて行かなきゃな。

今日は何があるんだろうか。

何も起きなきゃいいんだけど、そんな訳にもいかないしなぁ。

気を引き締めないと…よしっ。いける。頑張ろう。


「タラルス様、おはようございます。本日はお部屋で朝食を取っていただきます。その後、モズーク様からのお呼び出しがございますので、正装に着替えたのちモズーク様のお部屋にご案内致します。」

「おはようございます。わかりました。では僕はここに居ればいいんですね?」

「はい。もうすぐ食事係が朝食をお届けに参りますので、お部屋でお待ちください。」

「はい。」


朝は1人でご飯か…。よかった。

昨日みたいなご飯が続いたら気が参っちゃうもんな。


「失礼致します。本日の朝食でございます。スープの方は大変お熱くなっておりますので気をつけてお召し上がりくださいませ。」


朝食は、じゃがいもを惜しみなく使ったポトフに、ライ麦のパンが3切れ、新鮮な野菜を使ったサラダにフルーツが沢山入っているフルーツヨーグルトがあった。


やっぱすげーな。朝からこんな豪華な物食べるんだ。だって今ライ麦の季節じゃないよ?なのにこんなパンが食べれるなんて…。貯蓄庫も発展してんのか?凄いなぁ。


味は言うまでもなくとても美味しくて、特に俺はポトフが気に入った。

優しいコンソメの味に、野菜の味が絶妙に絡んでいてとっても美味しい。

あぁこれタスクラ王国でも作りたいなぁ。

みんなに食べさせてあげたい。

レシピも盗めないかなぁ。

レシピとかってどこにあるんだろ…。

調理室とかか?

また、調べてみるか!


「タラルス様。こちらにお着替えくださいませ。」

そう言って渡されたのは昨日着たものより少し豪華なつくりのもの。

首元にはキラキラと輝く宝石?みたいのが輝いていて、襟もついている。

スボンは昨日よりサラサラしてて、すげーって思った。

昨日の服が最高級だと思っていた俺はすごく驚いた。

昨日の服より上の服があるってことは、俺の国の服ってどんくらいの価値なんだろう…。

さすがにやばいんじゃないか?

俺の国遅れすぎてないか…?

モストン王国が進んでるだけ…?

いや、どちらにしてもタスクラ王国ももうちょい発展しないとやばい。

「タラルス様、ご支度お済みになられましたか?」

「はい。出来ました。」

「ではモズーク様の所へご案内致します。」


モズーク王の部屋は城の最上階にあった。

エレベーターで5階まで登った先がもう全てモズーク王の部屋だった。


俺の身長の3倍はあるだろうドアをノックし、モズーク王の返事を待った。

すると「入りなさい。」との声が中から聞こえてきた。

ドアを開け、部屋に入ると部屋はとてつもなく広かった。

だって5階全てがモズーク王の部屋なんだ。

当たり前と言ったら当たり前だ。


「ようこそ。昨日はよく眠れたかい?朝食は口にあったか?」

「あっはい。昨日はゆっくり休ませてもらいました。朝食もとても美味しく頂きました。」

「そうか、そうか。よかった。料理長に伝えておくよ。タラルス君が『美味しい』って言ってたと。多分、涙を流して喜ぶだろう。」


えっ俺、これどうやって返答したらいい?

えっ"そうですか"でいいのかな?

えっそれともなんか言うべき?

えっえっ俺、どうすればいいの?

「あっそうそう。君を読んだ理由なんだけどね…んーちょっと長くなりそうだから紅茶でも飲みながら話そうか。さぁこっちへ来なさい。

それとタラルス君はミルクティーは平気かな?

ちょうど美味しいミルクティーの茶葉を仕入れたばかりなんだ…」

「ミルクティー飲めます!!」

その場で立ち止まったまま答えると、モズーク王は目をぱちくりして俺を見た。


えっ…俺何か返答間違った?

えっやばいやばい。

もっと丁寧に言った方が良かったのかな…。

もしかしてモズーク様の話を遮っちゃったのか…?


「ははっ元気がいいな!その調子だ!あぁいい。私は君のことが気に入ったよ。そうか、ミルクティー飲めるか!よーし待ってろ。今、小間使いに用意させるからな。」


あ…よかった。怒ってなかった。

あぁよかった。

変な汗かいちゃったよ…。


「さぁさぁタラルス君。こっちに座って。」

モズーク様に言われた椅子に座ると、小間使いがミルクティーとガトーショコラを運んできた。

「このガトーショコラは私のお気に入りなんだよ。ぜひタラルス君にも食べて欲しくてね。」

「ありがとうございます。いただきます。」

「話なんだけどね…昨日、モラックに会っただろ?モラックは私の自慢の息子なんだ!モラックは将来私に代わり、この国を背負って立つ事になる。そうなると必然性的にモラックの命を狙う輩も出てくるだろ?私はモラックを危険な目に遭わせたくないんだよ。そこでだ、タラルス君に頼みたいことはただ1つ…モラックの影武者になって欲しいんだよ。」

「は…えっ…。ゴホッゴホッ」

「あーぁ大丈夫かい?そんな慌てて食べなくてもまだあるから。落ち着いて。

それで?どうだい?モラックの影武者になってくれるかい?」


えっ…。ちょっと待ってちょっと待って。

おかしくない?確かにモラック様と俺は背格好が一緒で、髪色も一緒だ。

だけど無理があるでしょ?

だってまず顔が違うし、俺も王子だよ!?

俺がいなくなったらタスクラ王国が崩れちゃうよ?!

ってかそもそも影武者ってなに?

そんなの誰か、俺じゃないやつに頼めばいいじゃん!この国進んでるんだから、なんでもやりようがあるでしょ?!この際、ロボットでもいいじゃん!

俺である必要性ある?


「答えは…もちろんYESだよね?タラルス君?」

「え…いや…。俺も一応王子…

「君の国のことはよーく知ってる。貧乏なことも、弱小国なことも。そんな国に我々モストン王国が攻撃を仕掛けたらどうなるんだろうね?

ふふっ。さぁタラルス君?タラスラ王国を守りたいんだろ?君の答えはなんだ?YESか?NOか?」


ぐっ…きたない。この王、いやこの男めっちゃ悪い奴だ。俺がそれを言われたら断れないのをいいことに。

どうしよう…。答えはもうひとつしかないのにそれを言うのが嫌だ。

言ったら俺は俺でなくなってしまう。

でもタラスラ王国王国のみんなを守るにはこれしかない…。


「はい…わかりました。やります…。」

「あぁよかった。君ならそう言ってくれると思っていたよ。あぁよかった。じゃあ明日からよろしくね。」

「はい…」


自分の部屋に戻る時、俺は自分が自分で無くなってしまうのを感じた。

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