第2話 到着

あぁー暇だ。

何もすることが無い。

タスクラ王国を出発してかれこれ1週間が経った。モストン王国までは最短でも3週間…。

つまりあと2週間は船の上での生活なんだ。

それにしても暇だなぁ。やることないし、早く着かないかなぁ。

こんな海のど真ん中で、できることと言えば景色を楽しむことぐらい。だけど景色を楽しむたってこんなんじゃすぐ飽きる。ずーっと海と空が見えてるだけなんだもん。同じ景色ばっかでもう飽きちゃったよ。

あーぁ何してようかなぁ。

家から持ってきた物に何か入ってないかな。

暇つぶし…暇つぶし出来るものはあるかな〜

あっ…これ。

トランプに将棋、オセロ…。

カバンに入っていた遊び道具は全て1人では出来ないもの…。

いや、出来るかもしれないけど相手がいた方が100倍楽しい。

なんだよ!もう!今やれるものが何も無いじゃん!

あーもういい。遊ぶのやぁーめた。


そういえば…

今頃父さんたちは何してるかな…。

俺がいなくなってから1週間。

元気してるかなぁ。

ちゃんとご飯食べてるかなぁ。

会いたいなぁ。

料理長の作ったオムライス…食べたいなぁ。

っ…ダメダメ!ダメだ!

考えないようにしてたのに!

考えちゃダメだ!タスクラ王国の事は忘れるんだ。

俺は、これからモストン王国へ行くんだ。

そう、俺はこれから頑張るんだよ。

大丈夫、大丈夫。

…よしっ。

そうだっ!天気もいいし、洗濯するか!




あー!!見えたっ!やっと見えた。

長かったなぁ。国を出てから3週間。

よく来れたなぁ。頑張ったな俺!

モストン王国の領域にそびえ立つ大きな灯台が目に付いた。

これが見えればモストン王国まではあと少し…。

いよいよ俺の任務が始まるんだ。


”パッパッカパッパッパー”


へっ?!えっなに?

うわぁぁぁ。


モストン王国の港へ着いた時、大きなラッパの音が響いた。

「ようこそ、いらっしゃいませ。タラルス様に出逢えたことを感謝致します。タスクラ王国からは約3週間ほどの旅、御足労ご苦労さまです。」

「私共はタラルス様のお世話を本日から致します。モストン城の召使いでございます。」

「さぁさぁお時間が迫っております。急ぎ、城の方へ向かいましょう。」


えっ…。なにこれ…。

なんで俺こんなに歓迎されてるの?

えっ…ちょっと待って。

俺一応、敵対国の王子だよね?

なんかこう「オラー!」とか矢を飛ばすとかしなくていいの?

えっ…なにこれ罠?俺これからどうなるの?

この人たちに着いていってほんとにいいの?


「ささ、まいりますよ。お荷物はこれで全てですか?」

「はい…そうですけど…」

「承知致しました。」

「あっ…ちょっ」

モストン王国の召使い?達は俺の荷物を持ち、さっさと歩き出してしまった。

一応ってか当然というか父さんたちから貰ったお守りが入ってるカバンだけは自分で持ってる。これだけは誰にも渡さない。持っててもらうこともしない。だってここはまだ勝手が分からない、敵対国なんだから。

あの召使いとかだって信用出来ない。

もしかしたら俺を牢屋みたいなとこに連れてって閉じ込める気かもしれない…。

そうなったら戦おう。

俺はタスクラ王国の王子なんだ。

これくらいの奴らなら倒せる。


「タラルス様、ここが王都でございます。」


うわぁー!!えっすごい。

なにこれ?

なんで車が空を飛んでるの?

えー!!あれはなに?!

何も持ってないのに誰もその場にいないのに電話?をしてる人がいる!

どうなってるの?もしかして、あの人エスパー?

これは…えっ、造られた草…?えーすっごい!

本物みたい!匂いはしなくて造り物って感じだけど、手触りは本物そっくりだ!

すごい、すごい!!


「タラルス様…?どうかされましたか?さぁ行きますよ。あと少しで城に着きます。」


はっ…。あ、俺テンションおかしかった。おかしくなっていたんだ。恥ずかしい。あーダメダメ、ここは敵国、俺はタラルス王国の王子、しっかりしなきゃ。

それにしてもこれが日常ってモストン王国は本当に凄いなぁ。これが普通なんだ。

ははっこんな所に俺たちが適うはずがなかったじゃん。よかったぁ。戦争になんなくて。

こんな進んだ国と戦ったら木っ端微塵じゃすまないかもしれないからね。


「さぁ到着でございます。」

港から歩いて15分ぐらいの所に城はあった。

うわぁぁ。すごい…。

モストン王国の城は白を基調としたシンプルながらも豪華な造りとなっていた。

ダイアモンドがあしらわれた城門に、様々な鳥の声が響く庭…全て全てがすごくて、タスクラ王国の城と比べものにならなかった。


「こちらで少々お待ちくださいませ。」

「今、小間使いを呼んできます。その後タラルス様のお部屋にご案内致します。」

俺が通されたのは1階の小さな部屋。

といっても、元の俺の部屋の3分の2の大きさはあり、俺一人なら十分ここで暮らしていける広さだ。

「ここで十分なんだけどなぁ…」

とまぁそんな思いは届かず、小間使いを名乗る女に、エレベーターを昇った先の3階の部屋に案内された。

「こちらでございます。私は一旦下がります。御用の際はお呼びくださいませ。」

「え…広すぎでしよ。」

その部屋はとにかく広かった。

例えるなら、学校の体育館3つ分ってとこか…?

いや、もっと広いかもしれない。

「俺1人だよね…?」

そんな当たり前なことを確認したくなった。

確認したところで”そう”としか言われないようなことを。

だって不安になるんだもん!

こんな広い部屋、初めて見たんだよ!

父さんの部屋だって、大講堂だってこんなに広くは無かった。

そんな広さの部屋を急にポンッと与えられたって不安になるでしょ?


まぁとにかく荷解きしなきゃ。

今日はこの後夕食で現モストン王国の国王と、

その妃、息子に挨拶をすることになっている。

ヘマは絶対許されない。

さぁ頑張ろう。

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