第19話 一緒の意味
「アタシ、もし結婚しても桜雪ちゃんとは会うと思うんだよ」
いつしか彼女は、そんなことを言っていた。
どういう意味か、よく解らなかった。
彼女は風俗を辞めて、他の男の家に居候している。
「また、風俗やると思うけどね」
その男のことが好きというわけではないらしい。
ただ実家に戻りたくないから、一人暮らしの男の所へ転がり込んだだけのようだ。
身体を差し出せば、それも容易いことなのだろうが、そういう風にしか生きられない彼女に同情も軽蔑も抱いてしまう。
自分の金を使わなくてもいい、そんな方法だけを選択しているようにも思える。
他にも、そんな男は何人かいるようだ。
「金も出さないでSEXしようとかするんだよ、そりゃぁさ、アタシの暇つぶしに付き合ってるから、キスくらいするけどさ、考えられないよね」
いつしか僕に、そんなことを言っていた。
つまり、誰でもいいのだ。
金さえ払えば抱かせるし、金が無ければ食事代にキスする。
(僕と同じような男が他にもいるわけだ…)
きっと迷惑なんだろうな…
そう思えた。
金もない中年とメールをやりとりするのも、面倒くさいのだろう。
彼女にしてみれば、何の得もないのだから。
風俗嬢として扱えばいい。
きっと彼女は、そう望んでいる。
ただの風俗嬢、そう思えば、いずれ彼女の事など気にならなくなる。
考えないようにしよう…そう思っている時点で、考えているのだ。
ずっと…ずっと…
色々と考える。
金があればいいのか?
結局、金で買うのか?
欲しいのは…何なんだろう?
僕が欲しいものは彼女なのだろうか?
それとも…
そんな事を考えながら、彼女と食事している。
彼女は僕といると落ち着くのだそうだ。
自分のことをネタに小説を書く。
そんな男は他にいないだろう。
面白い…珍しい…そんなところなのだろう。
「また、ネタにされるね」
楽しそうに笑う彼女。
ネタを探すでもなく、その日にあったことを書くだけで、面白いと言ってくれる人達がいる。
それだけで、僕は充分なのかもしれない。
僕は彼女に何を求めているのだろう?
安らぐわけでもない、むしろイライラするのに…。
自分勝手で幼稚、一言でいえば子供なのだ。
だけど、不思議と気になる。
会いたいとも思う。
好きなのかな?
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