第15話 自分の価値
色々と歯車が狂っていた。
会社でも、プライベートでも。
会社が傾いてリストラをした際には、僕のような個人主義の社員が優遇された。
景気が戻って来ると、僕のような人間は邪魔になる。
人が増え、個人の経験や力量より組織としての協調性が求めらていた。
少しづつ…僕の仕事は減っていった。
負担が軽くなるというより、人がいるから分配するような感覚、結局、僕は指導係のようになって、新人が仕事を覚えれば用済み…仕事を奪われていくような気持ち。
じゃあ上の役職は?
詰まっているのだ…引き抜かれてきた部長クラスは余っている。
中間管理職なんて平時には一番要らないのだ。
人妻とも会う時間は減っていた、連絡もし難く、僕は初めてデリヘルを利用してみた。
ただ…SEXがしたいというより、女が欲しかった、その身体も心も、女に振れたかった。
満たされるはずもない…金で身体と時間を買うだけなのだ。
心なんて満たしてくれるはずもない。
狂ったように女を求め抱いた。
忘れたかった、逃げたかった、ただ…現実に目を背け続けた。
窓も時計もないラブホテルで過ごす時間が増えた。
クスリも増えた。
安定剤、抗うつ剤、睡眠薬…頭痛薬。
時折、彼女と出かけたけど、もう彼女に執着はなかった。
ただ…捨てた過去が懐かしく…とても暖かな日々だったと後悔しかない日々。
僕が言い出す前に彼女の方から…
「ごめんね…やっぱり…子供は裏切れない」
彼女の娘に子供が産まれ、彼女は女から母親に戻った。
僕は会社を辞めた。
以前から録音していた人事部の言動を切り取り貼り付け、パワハラとして会社を訴え
退職金を上乗せして退職した。
そしてずっとラブホテルに籠っていた。
デリヘル嬢を呼び、幾人かの嬢と個人的に会って出かける、そんな生活を2年続けた。
独りではどこにも行けなくなっていた。
何をしていいか解らなくなっていた。
不倫なんて…何も得る物はない。
ソレに気づくまで、僕は何年も掛って、全てを失うまで、そこから抜け出せなかった。
代償を支払ったわけではない。
ゼロになるまで堕ちないと這い上がれなかっただけだ。
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