第2話 膝枕

 僕は口の悪い彼女といる時間が楽しくなった。

 相変わらず僕のことは『オマエ』『アンタ』扱いだったけど…。


「ねぇ今日、カラオケ行かない? 友達と行くんだけど」

「そんなとこに僕が混ざったら邪魔だろ?」

「いいから、ねっ、行こう」

 半ば強引に連れていかれた。

 まぁ送り迎えの便利な足なのかなと思っていた。

 カラオケには彼女の友人が2人来ていた。

 制服のままカラオケに入り、彼女たちは持ち込んだ酒を飲み始める。

 当時は今ほど、飲酒や喫煙にはうるさい時代じゃなかった、店員も見て見ぬふりをするのがマナーだった。


 当時は僕も煙草を吸っていたし彼女も吸っていた。

 そのうち、酔ってきた彼女は僕に膝枕をしてきた。

 彼女の友人たちはニヤニヤしている。

 彼女がトイレに行ったときに彼女の友人が僕に話しかけてきた。

「あの子、彼氏と別れたんですよ」

「そうなの?」

「好きな人ができたんだって言ってた」

「そう…気が多いんだな…」

「でも桜雪さん見て、わかった、あの子のタイプだもん」

「はっ?」

「あの子が、あんな風に甘えるの初めて見たし」

「今日だって、合わせるって言って誘われたんだよ」

「そうなの…知らんかった…」


 聞くまで、まったく気づかなかった。

 まぁ嫌われているとは思ってなかったけど…恋愛対象で見られているとも思ってなかった。


 カラオケを出て、彼女の友人達を家まで送った。

「楽しかった~」

「そうかい…」

「アンタのこと想って歌ったんだよ」

 信号待ちで彼女と唇を重ねた…

 ビールと煙草の香り…

(高校生なのに…ビールの香り…)

「好き…付き合って…」

 男慣れしているな…そう思った。

 そう思ったから…


 彼女は毎日、僕の寮へやってきた、学校が終わるとバイトへ来て、寮へ来て、酒を飲めない僕の部屋の冷蔵庫、彼女のビールが置かれるようになり、彼女の私服がハンガーに掛る。


 彼女と結ばれるのは、そう日数は必要ではなかった。

 ただ…彼女が処女だとは思ってなかった。

 泊りに来た彼女は、一晩中、痛がった。

「痛いんだね…でも…嬉しい」

 シーツの血に、なぜか僕は罪悪感を感じた。


 うっすらと白む外…窓から差し込む光の中、僕は彼女を抱きしめた。

「ごめんな…」

「なんで謝るの?」

「いや…なんでもない…」


 彼女の髪から煙草の匂い…

 高校生のくせに…


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