第6話 決闘!

「あれ誰? お前何した?」


俺は隣にいる黒髪の少女に聞くと、


「昨日のどろぼうで、取り返すときに、もめた」


「ヤイヤイ! 今日は旦那に来てもらった。見て驚くじゃねえぞ!来てくだせえ旦那!」


巳人リザードマンの三下がそう言うと、路地裏の奥から寅人ジャガーマンの男がかぎ爪を両手に身につけて、登場してきた。俺の二倍ぐらいの背があるだろうか?大きいなあ。


「よお、強え奴がいるって聞いたからよ、来たぜ、殺りあおうぜ!」


「下がって」


少女は懐からあの目玉だらけの包丁を取り出すと、ニタニタ笑い出した。

それを見てどうやら相手を引いたようで、


「すいぶんと、悪趣味な小剣を持ってるな」


と言った瞬間、少女が襲い掛かったのを、寅人ジャガーマンは簡単に防いだ。


「おい、まだ言い終わってないだろ?子猫ちゃん?」


寅人ジャガーマンは余裕そうに言うが、その言い分を少女は聞かずに攻撃する。


しかし、その攻撃を交わすのと同時に彼女の腹に蹴りをお見舞いする。


少女が吹き飛ばされると瞬く間に起き上がって、今度は壁を蹴り飛ばして四方八方から攻撃するが、全て避けられ、防がれる。


壁を蹴り飛ばし、刺突。避けられるも、そこから右払い。すると、寅人ジャガーマンの男はびっくりしていたが、なんとか避けて、彼女にかぎ爪の上段が襲い掛かかる。


彼女がなんとか防いだ途端にかぎ爪の刃が崩れた。


「なんだとォォォ!!クソガァ!」


男のかぎ爪はもうボロボロだったのだ。


それなのに寅人ジャガーマンの男はもう一回攻撃しようと左手のかぎ爪で攻撃しようとしたのを少女は右払いでそのかぎ爪を叩き割った。


「バカな!こんなことがあって…


寅人ジャガーマンの首に気色の悪い小剣が突きつけられる。

彼女はとてつもなく笑顔で、その笑顔ははっきり言うのは悪いがそれはまさしく殺人鬼であった。


「こないでね、二度と。来たら今度はあなたの体をあのかぎ爪みたく上下パッカンしてから四肢をもいであげるから。いい?」


「ヒィィイ!!!!!!」


相手は顔を青くし奇声を上げ尻尾を巻いて逃げていった。巳人リザードマンの方も旦那についていく形で逃げていった。


少女は懐に剣をしまい、こちらに歩いてくる。

後ろにいる店主はガクガクと震え、


「あの子、おっかねえな…」


「はい…たぶん、前世はきっと殺人鬼だったんでしょう」


俺は店主とコソコソと話していると、


「ねえ」


「ん?ど、どうした?」


今の話を聞かれてるんじゃないかと心配したが、そうでもないらしい。


「なんで私の動き全部読まれてたの?」


「読まれてた? そうなのか?俺には全くわからなかったが…」


「フェイントとかしたんだけど、全部よまれた」


「それはたぶん、武器が特殊効果ありのものだったんじゃないか?」


脇にいた店主がそう言った。


「特殊効果? なんですそれ?」


「え?知らねえのか?坤人デーモンの契約だとかそういうのを使って武器に使用者を強化させるもんをつけたりするだろ?それだよそれ!んで、今回のあの大胆な行動を見てみると、たぶん『予知』だろ?ほんの一瞬だけ未来が見れるってやつ」


「へえ、そんなのあるんですか?」


「なんで知らねんだよ?常識だろうが」


「いや、武器にあんまり興味なくて…」


「ねえ」


少女が後ろから俺の服を引っ張って、


「さっき、なに話してたの?」


と聞かれ俺は「べ、べつになんでもねえよ!行こうぜ」と少しうろたえて言った。


店主に関していえば、少女にあまり近づかないようにしているように見えた。



「着いたぜ」


店主はさしたのは超でかく高くそびえ立つ城であり、それは四方を俺の背の何倍も大きい石垣に囲まれていた。

石垣には赤い龍の装飾が飾られていて、目の前にある門の両端にある朱色の巨像はこちらをギラリと睨む。


「デケェ」


俺はなんて奴に目をつけられたんだろ?と少し不安になったが、


「俺は少し離れたお店で待ってるからな…頑張ってこいよ!じゃあな!」


自分よりも怖がっているやつを見ると、あんまり怖くなくなるんだなと思って安心した。


隣にいる少女はあいも変わらずつれない表情だった。


「お前、よく無表情でいられるな」


「わくわくしてる」


少女は無表情で答える。


「いや、見えねよ」


いや、少しだけほおのところが赤くなっているように見えた。


観光しに来たんじゃねえよ。


「よし、いくぞ」


俺は門の中に歩いていく。


少女は後ろからついてきた。




俺たちが門の下をくぐろうとすると、


「おい、そこの辰人エルフ申人ヒューマン


という声が聞こえてきて、俺と少女は辺りを見渡す。


「ここだ!ここ!ちゃんと見ろや!」


右を見ると、羽の生えた子人フェアリーがいた。その子人フェアリーは黒い服に身を包み、サングラスをかけて通行所の机の上に腕を組んで立っていた。


「なんです?」


「なんです?じゃないで、この中に入るんやったら通行料を払ってもらおうか?それか、通行証を見せてもらおうか?


え?通行証?そんなの持ってねえよ。しかもお金払うのかよ。店主、聞いてないよ。

まあ、仕方がない。入らないと、通れないわけだし。


「いくらですか?」


と聞くと、


「一千テラス」


「いっ、一千?!」


「あ、そこの嬢ちゃんを含めると、二千な」


まいったな、俺今そんなに持ってねえよ。

今日の飯でほぼ全て使っちまったよ。


「やべえ、どうしよう、入れねえよ」


「なんや?金ないんやったら帰んな!」


「ええと、でも俺この中に入らんと行けないんですけど…」


「知るか!ここは金なしが入るところじゃ…」

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